一度は行きたい冬の秘湯。交流温かなひとり旅【高峰温泉】 – 温泉会議
日常から距離を置き、温泉宿で過ごす自分時間。これなら比較的リーズナブルと思える宿を求めて旅する筆者が、価値あるひとり温泉を発掘していきます。

一度は行きたい冬の秘湯。交流温かなひとり旅【高峰温泉】

温泉と旅のライター

その宿があるのは、標高2000mの山の上。長野県小諸市にある温泉好きなら誰もが一度は訪れたいと憧れる秘湯、高峰温泉です。筆者もずっとずっと足を運んでみたいと思っていたのが、冬の高峰。宿までの送迎は雪上車、そして雲上の野天風呂から眺める雪景色。多彩なイベントを通して、ほどよく宿泊者のみなさんともつながれて、ひとりだけど、ひとりじゃない心温まる旅になりました。

雪上車での送迎も冬ならではの体験

北陸新幹線の佐久平駅または、しなの鉄道の小諸駅からバスに乗り、終点の高峰マウンテンリゾートで下りると、高峰温泉の雪上車が待っていました。冬は宿までの道が通行止めとなるため、バスも車で来た人も雪上車に乗り換えて宿まで向かいます。

雪道に入ると、ガタガタとした音と振動が体に伝わってきました。すぐ横はスキー場のゲレンデ。滑る人々を横目に見ながら、キャタピラが力強く雪の上を進んでいきます。

10分ほどで宿に到着しました。

ひとり旅の客室はトイレ付きの8畳和室。畳も真新しく、トイレもウォシュレット付きで、どこもかしこもきれい。そしてなにより驚いたのが、室内が本当に温かいこと。窓ガラスが三重になっているんです。外はマイナスウン十℃の世界。ですが、暖房を付けていない時間があったほど、ぬくぬくと快適に過ごせました。

ひとり旅の予約は、基本は前日に電話予約。私が宿泊した1月など、宿泊者の比較的少ない時期は、ホームページ経由で少し先の予約が可能なこともあるようです。

雲上の野天風呂と温冷交互浴

雲上の野天風呂の「女ゆ」のサイン。小道の奥に「男ゆ」がありました

まずは雲上の野天風呂へ。入浴は日没ごろまで、また悪天候の日には入れないこともあるお風呂。建物から50メートル歩いたところにそれはありました。

女湯の「雲上の野天風呂」

寒波の襲来でお天気が心配でしたが、絶景、絶景。1月後半には珍しく、雪は少なめでしたが、周囲の山々、そして遠くの小諸や東御の町並みまで、温泉に浸かりながら見晴らすことができました。

ランプの湯

内湯は、写真の「ランプの湯」と、もうひとつ宿泊者専用でランプの湯をひと回り大きくした「展望風呂」の2つがあり、どちらも24時間入浴可能です。

どちらも小さな浴槽が源泉浴槽で、大きな浴槽は加温浴槽。ランプの湯の源泉浴槽のほうが35℃とぬるめで、冬は結構な冷たさですが、ここにじっくり浸かり、冷えたところで加温浴槽へ。そしてまた源泉浴槽へ、という温冷の無限ループがたまりません。

高峰温泉の泉質は、含硫黄-カルシウム・マグネシウム-硫酸塩泉。飲泉も飲みやすく、便秘や肥満の改善に効能があるとのこと。

夜の訪れと夕食

部屋からの眺め

部屋に戻ると、遠くの山並みが赤く夕焼けで染まっていました。雲は低い位置に垂れ込め、その上の澄んだ空には新月直後の細い月と金星が光っていました。

ほどなくして夕食の時間になり、食事処に向かいます。1組ずつ布で仕切られた席になっていて、視線が気になりません。

長芋の美味しさをぎゅっと固めた長芋豆腐などの前菜、サーモンのお造りなどが最初に並べられていて、あとからマイタケの旨みたっぷりの茶碗蒸しや岩魚の塩焼き、天ぷらといった温かいものが運ばれてきました。

季節野菜の天ぷら(いちばん手前がリンゴ)

季節の天ぷらには長野らしいリンゴも。

星の観望会にスノーシューツアーとイベント目白押し

高峰温泉といえば、山の自然に精通したスタッフがガイドするイベントが数々。冬はきっと星がきれいだろうな、と夜の「星の観望会」はぜひ参加したいと思っていました。

夕食後の20時30分。外はマイナス10℃以下、着込めるだけ着込んで玄関前に集まります。町明かりの影響のない、山の上の真っ暗な空には、やや曇り気味だったとはいえ、たくさんの星たちが輝いています。後から出てきた宿泊客からも歓声が上がります。

ご主人の後藤英男さんがレーザーポインターで指し示しながら、まずは肉眼で見える星たちを観察します。無数の星が白く連なって伸びた冬の天の川もきれいに見ることができました。その後、大きな3台の望遠鏡で、木星や土星や星座に大接近して観察。肉眼では見えない遠い星の輝きさえも、小さな覗き穴からまばゆいほどに感じることができました。

冷えた体を温泉でゆっくり温めて就寝。2日目はスノーシューツアーに参加しました。その様子は別記事でご紹介させていただきます。

高峰温泉

長野県小諸市高峰高原

https://www.takamine.co.jp/

野水 綾乃
温泉と旅のライター
栃木県を拠点に活動する温泉と旅のライター。古くからの湯治場や歴史を感じさせる温泉宿が好き。ひとりで泊まれる格安宿の魅力を発信。二ツ星温泉ソムリエ、温泉入浴指導員、塩原温泉まちめぐり案内人。
価値あるひとり温泉の記事
View All >>

#ひとり旅
山奥の湯治場で足下湧出だらけの露天巡り【元湯夏油・岩手県】
Writer:
連載: 価値あるひとり温泉

#ひとり旅
森の貸切湯まで徒歩10分、究極の癒しがそこに【銀婚湯・北海道】
Writer:
連載: 価値あるひとり温泉

#オープン
湯煙包む温泉街を歩いて貸切風呂へ【熱川温泉みはるや】
Writer:
連載: 価値あるひとり温泉

野水 綾乃さんの記事
View All >>

#お鷹ポッポ
笹野一刀彫のお鷹ポッポと米沢・白布温泉
Writer:
連載: 温泉地のかわいい民藝

#にごり湯
奥鬼怒「加仁湯」は露天風呂天国!5本の源泉が織り成すにごり湯を
Writer:
連載: 湯戸端会議

#奥鬼怒温泉郷
奥鬼怒の大自然を走るサイクリングイベントに参加し、秘湯のにごり湯へ
Writer:
連載: 湯戸端会議

#ぬる湯の記事
View All >>

#ぬる湯
藤村の間とぬる湯と鯉料理「田沢温泉ますや旅館」
Writer:
連載: 湯戸端会議

#ぬる湯
湯船の真横で湧く極上ぬる湯。湯岐温泉「和泉屋旅館」
Writer:
連載: 湯戸端会議

#ぬる湯
農家が営む極上空間で、つやっつやごはんの朝ごはん【山ふところの宿みやま】
Writer:
連載: 大好き!お宿の朝ごはん