高峰温泉のスノーシューツアーが超へっぽこでも楽しかった – 温泉会議
日常から距離を置き、温泉宿で過ごす自分時間。これなら比較的リーズナブルと思える宿を求めて旅する筆者が、価値あるひとり温泉を発掘していきます。

高峰温泉のスノーシューツアーが超へっぽこでも楽しかった

温泉と旅のライター

高峰温泉に泊まった翌日。帰りの路線バスは午前と午後の1日2本だけ。できればゆっくりしたいと思い、午後の16時のバスで帰ることにしました。10時のチェックアウトまでに部屋を出れば、バスの時間まで追加料金なしでいかに過ごしても自由なのです。

のんびり温泉に浸かるのもいいですが、せっかくなので午前中は参加費1000円の高峰山スノーシューツアーに参加することに。山登りはおろか、運動もめったにしない怠惰な私。最初はどうなることかと思いましたが、なんだかんだで楽しかったというお話。

最初に最大の山場がやって来る

高峰山の標高は2106m。高峰温泉の宿のあるあたりが2000m弱で、標高差は150mほど。そう聞いても登山に詳しくない私はどれほどのものなのかあまり検討がつかないのですが、コースとしては初級、そしてツアーに参加したことがある友人の「ただただ楽しかった」という話で参加してみることにしました。

ガイド付きのツアーで、参加費は自然保護協力金と保険として1000円のみ。9時~12時の3時間コースです。

持ち物は、登山用のレインウェア上下と登山靴、手袋、帽子、リュックなどを準備していきました。スノーシュー、ストック、足首周りを雪から守るスパッツはレンタル可能。格安のレインパンツやネックウォーマーなどは売店で販売もあります。

当日の参加者は私ともうひとりの女性の2人。この日は10年に一度の寒波と言われた日でしたが、午前中はお天気が持つだろうということで決行となりました。ガイドさんの「遅れないように頑張って付いてきてくださいね」の言葉に、迷惑をかけないようにしようとプレッシャーがかかります。

アズマシャクナゲの蕾。6月の中ごろ、ピンク色の花を咲かせる

宿の前でスノーシューを装着し、歩き方のコツなどを教えてもらったら出発です。

登山道に入って最初に目に留まったのが、アズマシャクナゲの蕾。近くにはハクサンシャクナゲという別の種類のシャクナゲも自生していました。

本来アズマシャクナゲは通常標高2000m以下、ハクサンシャクナゲは2000m以上で見られるものだそうで、このふたつが共生しているのは珍しいのだそうです。標高2000mを越えてアズマが自生する場所には、冷たい風からそれらを守るように立つ大きな木がありました。

このあと、いきなりコースでいちばんの難所という坂がやってきました。ゲレンデ横の上級者コースのような急斜面を、ガイドさんを先頭に蛇行しながら登っていきます。途中で何度も息切れしてしまい、ちらっと見えたリフトに乗せてくれ~と言いたくなりましたが、ぐっとこらえて付いていきます。

展望台

急斜面を登り切り、振り返ると、晴れやかな絶景が待っていました。志賀高原から草津、そして谷川岳のほうまで、白い稜線が美しく広がっています。「寒波が近づくなかでここからの景色が見れたのは奇跡ですよ」とガイドさん。

このあとは尾根の道となり、小さな登りと下りを繰り返しながら山頂を目指します。

長野と群馬の県境をまたいで行ったり来たり

途中にあった県境の印。左が群馬県、右が長野県です。分水嶺にもなっていて、群馬県側に積もった雪は太平洋へ、長野県側に積もった雪は日本海へと分かれていくのだそう。

木の上にクマ棚を発見

さらに進むと、木の上に鳥の巣のようなものがあります。これは クマ棚。クマは意外にも木登りが上手で、ドングリやブナの実を枝を折りながら食べ、残った枝をお尻の下に敷いて休憩場所にしているのだそう。このクマ棚は少し崩れていて、10年ほど前にできたものだそうです。

ほかにも、テンのマーキングの跡や、ウサギの足跡など、山で暮らす動物たちのさまざまな痕跡を発見できました。

山頂付近では大岩に圧倒される

山頂近くの大岩

山頂近くにさしかかると、大きな岩が行く手を遮るようにそびえていました。高峰山は浅間山と同じ烏帽子火山群のひとつで、この大岩はかつての噴火で露出した溶岩なのだそう。今は火口もなく、噴火の心配もないとのことですが、見上げるほどの高さの大岩に大地のエネルギーを感じます。

山頂からの眺め。上空には黒い雲が…

大岩の先に高峰山の山頂がありました。岩の上にある山頂からは360℃の壮大な景色が見渡せます。この日は雲が出てきてしまいましたが、ふもとの佐久平などはよく見えました。晴れた日は八ヶ岳や蓼科山、中央アルプスや北アルプス、そして富士山まで見ることができるのだそう。

高峯神社

さらにその先の大きな岩には、小さな祠と剣が突き刺さった高峯神社がありました。剣は修験道の山であった名残だそう。帰路の無事を祈り、下山します。

ここからは下りが中心。怖がらずにお腹を突き出すようにして歩くのが下りのコツだそう。そのことを頭に入れて、行きに苦労した坂に立ち向かったら、拍子抜けするほどスイスイ下りられて「あら、楽しい」。「スノーシューは下りを楽しむためにありますからね」とガイドさん。あっという間に宿まで下ってこれました。

このあと入る温泉がまた格別

この日は午後から休館だったので入浴できたのは「ランプの湯」のみ

お昼には宿の食堂で予約していたお蕎麦(石臼で自家製粉の手打ち蕎麦でとても美味しかった)をいただき、その後に温泉へ。この日は休館日で、宿にいるのはスノーシューツアーに参加した2人と、個人でスノーシューを楽しまれていたご夫婦の4人だけ。ほぼ貸し切り状態の贅沢な時間でした。

温泉に体が溶けて、思わずあぁ~と声が漏れました。まずは熱い湯で冷えた体を温め、その後はぬる湯でうたた寝。窓の外は午前中とは打ってかわって激しく雪が降っています。

長野らしいリンゴ丸ごとのシャーベット

温泉以外は休憩所で過ごします。喫茶営業もしていて、湯上がりにコーヒーと、りんごを丸ごと1個使ったシャーベットを注文。

休憩所の窓から見えるエサ台。たくさん来てたのはカワラヒワかな?

あとは雪上車の時間まで外を眺めたり本を読んだり。窓から見える野鳥のエサ台は、激しさを増す雪のせいか、朝よりも賑やかで、飽きずに長い時間眺めてしまいました。最後にもう一度温泉に浸かり、帰りの雪上車の時間に。気付けば24時間以上の滞在。連泊したぐらいのゆったりとした時間を過ごすことができました。

山の天気はドラマチックで、その日その日の表情を見せてくれます。これもまたひとつの出会いですね。また訪れた時はどんな表情を見せてくれるでしょう。季節を変えて訪れてみたいものです。

高峰温泉

長野県小諸市高峰高原

https://www.takamine.co.jp/

※ガイド付きツアーは9時~12時/前日の夕食時に要予約

野水 綾乃
温泉と旅のライター
栃木県を拠点に活動する温泉と旅のライター。古くからの湯治場や歴史を感じさせる温泉宿が好き。ひとりで泊まれる格安宿の魅力を発信。二ツ星温泉ソムリエ、温泉入浴指導員、塩原温泉まちめぐり案内人。
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