かけ流しにもほどがある!白布温泉「西屋」の湯滝とできたて駅弁「牛肉どまん中」に心打たれる
E8系新幹線電車「つばさ」、奥羽本線・高畠~赤湯間
2024年3月、山形新幹線「つばさ」に新型のE8系車両がデビューしました。目を引く紫色はおしどりパープルで、紅花イエローがアクセントになっています。車内は、普通車も全席に電源コンセントが装備され、スマホ時代に相応しいサービスになりました。さらに、宇都宮~福島間の最高速度が時速300㎞に引き上げられて所要時間も短縮。従来の車両より揺れも少なくなり、快適な乗り心地のおかげか、今まで以上に乗車時間が短く感じられるようになりました。
●山形新幹線の新しい「つばさ」で行く、米沢・白布温泉!
白布温泉「湯滝の宿 西屋」
東京から新しい「つばさ」に揺られ約2時間。米沢で下車してやって来たのは、米沢八湯の一つ・白布温泉です。この日、お世話になった「湯滝の宿 西屋」は、2000年の大火を経て、白布温泉にただ一つ残った茅葺屋根がシンボルとなっている鎌倉時代から700年以上の歴史を誇るお宿。本館は築100年以上といわれ、貴重な建物を守るために、館内敷地内は完全禁煙。さらに、貸切の場合を除いて宴会等は一切おことわりという、シンプルにお湯に向き合いたい方には、最高の環境となっています。
湯滝風呂
西屋さんにお世話になるとまず直行するのが、総ヒバ造りで築300年以上といわれる「湯滝風呂」。江戸時代中期に吾妻山麓の御影石を切り出して造られたという石風呂は、温泉成分によって黒く色を変えています。ただ、その歴史もさることながら、湯滝から流れ込む温泉が豪快にかけ流され、浴室外の簀子の下へとあふれ出していく風景は、話題のドラマ風にいえば「かけ流しにもほどがある」!いまから20年前、2004年に初めて日帰り入浴したときから、湯力に圧倒され続けています。
湯滝風呂
毎分1500リットルとも云われる豊富な湯量に恵まれた白布温泉は、57.2℃、ph7.3、溶存物質総量(ガス性のものを除く)1198mg/kg、泉質はカルシウム―硫酸塩泉です。ボーッと湯滝に打たれ、シャワーもカランもない浴室で、湯端にどっかり腰を下ろして、湯船から桶で汲み出して体を洗えば、それは至福のひと時。何百年も昔からこのお湯に身を委ねてきた人たちへ思いを馳せれば、人も自然に生かされている存在にすぎないと感じられることでしょう。
宿泊者のみ利用可能な「貸切風呂」
「湯滝風呂」は日帰り入浴でも利用出来ますが、西屋にはもう一つ、2階に宿泊者が利用できる「貸切風呂」があります。事前予約は不要で、別料金の必要もなく、もちろんかけ流し。落ち着いてお湯を楽しみたいときは、こちらもアリかもしれません。ちなみに西屋の温泉の流れと温度管理は、若女将がほぼ一人で行っているそうで、季節による温度変化や温泉量をしっかりと見極めながら、心地よいお湯を“作って”下さっています。
●米沢駅弁の定番「牛肉どまん中」!
牛肉どまん中
さて、米沢に来たら、必ず食べたい駅弁といえば、米沢駅弁・新杵屋が製造する「牛肉どまん中」(1350円)です。平成4(1992)年7月の山形新幹線開業を記念して誕生した駅弁で、いまでは米沢駅弁の定番。包装にスリーブ式を取り入れ、“コンビニ弁当世代”の台頭に対応して、中央部に中が見える小窓を開けたのが特徴です。ちなみに「どまん中」の名前は、山形県産のブランド米「どまんなか」に由来しています。
牛肉どまん中
【おしながき】
・ご飯(山形県産米どまんなか)
・牛肉煮 ごま パセリ
・牛そぼろ煮
・玉子焼き
・蒲鉾
・煮物(里芋、人参)
・にしん昆布巻き
・桜漬け大根
牛肉どまん中
「牛肉どまん中」の素晴らしいところは、何といっても「ご飯と牛肉のバランス」だと思います。まず、「どまんなか」のご飯の味が強すぎず、和菓子屋にルーツを持つ新杵屋秘伝のたれで煮込まれた牛肉との味わいがちょうどいいこと。そしてもう一つ、ご飯と牛肉の量がちょうどよく、ご飯と牛肉を同時に食べ終わることができること。どちらも作り手が、しっかり計算して作っているのがすごい。最後のご飯一粒まで食べやすいように角を丸くしたオリジナルの折箱も心を打ちます。
牛肉どまん中(カレー)
「牛肉どまん中」は、通常の「しょうゆ味」に加え、「しお」「みそ」「カレー」(各1350円)という4つの味が楽しめます。とくに最近は、令和4(2022)年にリニューアルが行われたカレー味が、好評を博しています。確かにカレーのスパイシーな風味が、いままで以上に食欲をそそってくれます。なお、米沢駅ホーム売店は週末のみの営業(2024年5月現在)。それ以外の日は改札外の売店、NEWDAYSにあるほか、駅前の信号を渡った向かいにある新杵屋の本社売店でも販売中です。とくに、本社売店出来立ての「牛肉どまん中」は、温もりを感じながら、格別の味わいが楽しめることでしょう。
(5月31日加筆)なお、この春から、朝の上り「つばさ」3本(と、その折返し列車)で「牛肉どまん中」の試験販売が始まりました。「牛肉どまん中」の車内販売本格再開に向けての試金石になるとみられるだけに、今後の盛り上がりに期待したいところです。
●白布温泉・小野川温泉のはしごが出来る!嬉しい路線バスのダイヤ改正
真冬も白布温泉「西屋」の前を走る路線バス
普段、公共交通機関で暮らす東京の人間にとって、地方の温泉宿を訪ねる時の「足」は、最大の課題と言っても過言ではありません。この春、米沢市内を走る山交バスの路線が再編され、白布温泉行と小野川温泉行が統合されて、米沢駅~小野川温泉経由~白布温泉の路線となりました。しかも、小野川温泉・白布温泉へは、日中毎時1本の運行となり、交通系ICカードの利用も出来ます。まさに「為せば成る」!温泉好きにはありがたい路線バスのダイヤ改正です。
E3系新幹線電車「つばさ」、奥羽本線・舟形~新庄間
新型車両が登場した山形新幹線。今後はこれまでの車両と少しずつ世代交代が進んでいくものと思われます。従来の車両のうち1編成が、かつてのシルバーと緑の塗色が復刻されており、こちらも出逢えるとラッキーな車両です。12月には山形~新庄間の開業から25年を迎える山形新幹線。新旧の新幹線車両を乗りくらべ、沿線の様々な温泉を入りくらべ、さらに「牛肉どまん中」の様々な味を食べくらべながら、山形の温泉旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。