温泉が育む、伊東の駅弁「いなり寿し」 – 温泉会議
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温泉と駅弁のホットな関係。駅弁を食すために温泉へ向かうのか?はたまた、温泉に入るために駅弁を食すのか?駅弁食べ歩き20年の濃厚鉄分ライターが、愛してやまぬ「駅弁と温泉」の旅。

温泉が育む、伊東の駅弁「いなり寿し」

フリーランスライター

駅弁食べ歩き20年、のべ5000個を食したライター望月は、じつは温泉も大好き!この駅弁温泉では、「駅弁と温泉」のある旅を綴ります。

鉄道の発展を支えた「温泉」の存在

2022年は鉄道150年。鉄道の発達を支えてきたのが「温泉」の存在です。いまも毎日、大都市から近郊の温泉地へ“温泉特急”が走ります。「踊り子」「草津」「きぬがわ」「はこね」「きのさき」・・・。特急列車の愛称にも湯の香が漂うもの。そんな旅のお供といえば「駅弁」。温泉が湧く所には、「駅弁」もあります。そんな駅弁と組み合わせたい温泉旅・・・今回は、静岡の伊東温泉を目指して、特急「踊り子」に乗り込みました。

特急「踊り子」

戦前からの歴史を誇る、東京から伊豆への温泉客向けの列車。昭和56(1981)年からは、特急「踊り子」の愛称で親しまれています。東京を発車すると、品川・川崎・横浜・大船の順に停車して、こまめに温泉客を拾い、小田原、湯河原、熱海で少しずつお客さんを下ろしていきます。熱海では、前9両が伊豆急行線直通の伊豆急下田行、後5両が三島から伊豆箱根鉄道駿豆線へ直通する修善寺行に分かれます。

全国3位の源泉数を誇る伊東温泉

伊東駅

伊豆急下田行の「踊り子」号で、ひときわ多くのお客さんが下りるのが伊東駅。伊東温泉は、別府、由布院に次いで全国3位の源泉数を誇ります。

東海館

そのシンボル的な存在として知られる「東海館」。昭和3(1928)年築、木造3階建ての建物は、昭和13(1938)年の伊東線開通によって、行楽客が増えたことをきっかけに増築が進み、いまのような建物となりました。残念ながら温泉宿としての歴史は幕を閉じましたが、いまは新たな観光名所として、多くの人が訪れています。

東海館・大浴場

東海館では、歴史あるお風呂で日帰り入浴が楽しめます。昔ながらの大浴場と小浴場があって、時間帯を区切って、男女入れ替え制となっています。注がれているのは、松原温泉・松原25号。26.3℃、ph8.6、376㎎/kgのアルカリ性単純温泉が加温され、かけ流されています。伊豆の温泉は、高温で塩っぽいお湯のイメージが強かったのですが、伊東市街地の源泉は、豊富な湧き水に恵まれていることもあり、湯温は比較的低めの所も多いと、地元の方から伺いました。

火山の恵み!伊東の‟水道山″の水で作る駅弁

そんな伊東の“水道山”と云われる、かつての火山の水を使って作られている伊東駅の駅弁が、祇園の「いなり寿し」です。戦後すぐの昭和21(1946)年に伊東温泉で誕生。昭和34(1959)年から伊東駅弁となりました。70年以上の歴史を誇り、駅弁としても還暦を超えたロングセラー。現在は3個入り、6個入り、6個入り(海苔巻入り)の3種類が販売されています。6個入りのレトロな掛け紙には、温泉マークも入っていて、「温泉街の駅弁」であることが感じられます。

秘伝の調合比率が受け継がれる酢と国産コシヒカリをベースとしたご飯で作られる酢飯。これに醤油と砂糖でやや濃いめに味付けされたお揚げを合わせて、独特のジュワッとした食感が魅力のいなり寿しが出来上がります。酢飯の酸味をお揚げが甘く包んでくれるいなり寿し。“酸いも甘いも”という言葉は、豊かな人生経験を持つ方のたとえとして遣われますが、いなり寿司もまた、深くて、味わいのある食べ物だと改めて感じさせられます。

温泉同様、火山の恵みが活かされている伊東の「いなり寿し」を、育んできたのは温泉街でした。温泉街の昼、お宿ではチェックアウトからチェックインの合間に当たり、お風呂や館内の清掃や、当日の宿泊客の準備に追われる時間。一方で土産物屋さんは、温泉宿をチェックアウトしてきたお客さんの接客に追われる時間です。そんな温泉を支える皆さんが軽くつまめる食べ物として、伊東駅弁の「いなり寿し」が重宝されてきました。まさに温泉と共に生きる駅弁なのです。

いなり寿し駅弁のお供には・・・

いなり寿しとポリ茶瓶のぐり茶

伊東駅の「いなり寿し」と一緒に買い求めたいのが、「ぐり茶」です。伊豆では緑茶の愛称として、「ぐり茶」の名が定着しています。そのぐり茶、伊東駅の祇園売店では、昭和40~50年代の駅で一世を風靡した、“ポリ茶瓶”にお湯を入れて販売してくれるんです。ポリ茶瓶が今も現役の駅は全国でも本当に数えるほど。いなり寿しとぐり茶を組み合わせて、伊豆急行線で南へ向かえば、伊豆大島をはじめとした島々と、青い海を眺めながらいただくことが出来ます。

サフィール踊り子

踊り子と共に伊豆の旅を盛り上げるのが特急「サフィール踊り子」です。令和2(2020)年デビュー、全車グリーン車指定席でゆったりとした旅が楽しめます。行きは「踊り子」、帰りは「サフィール踊り子」とすると、両方楽しむことが出来そうです。もちろん、懐に余裕のある方は、行きも帰りも、サフィールというのもアリ。ただ、人気が高い列車ですので、もしも旅の日程が決まっていたら、早めに指定を取ることをお薦めします。

駅弁には地域の文化が詰まっています。温泉旅の帰りに駅弁をいただけば、宿の食事で知った地域の食文化の“復習”にも繋がることもあれば、地域をより深く知ることに繋がります。それが、旅の「いい思い出」を作っていくのです。アナタも“駅弁のある”温泉旅を始めてみませんか?

望月崇史
フリーランスライター
静岡県富士宮市生まれ。早稲田大学在学中から放送作家に。ラジオ番組をきっかけに、全国の駅弁食べ歩きは20年、5000個以上!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送NEWS ONLINE「ライター望月の駅弁膝栗毛」など「鉄道のある旅」をテーマとした記事を執筆。
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