森の貸切湯まで徒歩10分、究極の癒しがそこに【銀婚湯・北海道】 – 温泉会議
日常から距離を置き、温泉宿で過ごす自分時間。これなら比較的リーズナブルと思える宿を求めて旅する筆者が、価値あるひとり温泉を発掘していきます。

森の貸切湯まで徒歩10分、究極の癒しがそこに【銀婚湯・北海道】

温泉と旅のライター

訪れた人が皆、宿のことを絶賛するのが、今回はじめて訪れてよく分かった。森の中に点在する5つの貸切湯が、宿泊者ならばすべて無料。その造りだけでなく、お湯も素晴らしいときている。ひとりでも比較的リーズナブルに泊まれるので、泊まって時間の許す限り、湯巡りに興じたい宿だ。

無人駅から送迎で宿へ

「銀婚湯」の最寄りは、JR函館本線の落部駅。宿までは車15分ほどの距離で、事前に電車の時間を知らせておけば迎えに来てくれる。

ただ、落部駅に停車する電車が極端に少なく、昼間の時間帯は10時台(函館行きは9時台)と14時台の1日2本の各駅停車しか上下線とも停まらない。私は登別方面から14時台の電車でチェックインし(電車の時間が乱れて到着が30分遅れたけど)、翌日は9時台の函館方面行きの電車に間に合うように送ってもらった。函館方面に行くにしても、長万部方面の電車に乗り、八雲で特急に乗り換えるルートなら、10時台発となり、少しだけ長く滞在できる。

銀婚湯に到着。緑が目にまぶしい。

部屋は玄関の上の旧館の客室。1名でも1泊2食1万円台前半。広縁付きの8畳和室で、ひとりにはちょうどよいサイズだ。建具などはレトロだが、全体的にとてもきれいで、むしろ味わいがあって素敵。トイレと洗面は共同となるが、すぐ近くにあって人と重なることもなく、問題なく過ごせた。

森を歩いて隠し湯巡り

ひと息ついたら、さっそく貸し切り湯巡りへ出かけた。5つの貸し切り湯はいずれも無料で、フロントで空いているところを聞き、入湯札を受け取って向かう。1回の制限時間は1時間。

最初に向かったのは、いちばん近い、歩いて3分ほどのところにある「かつらの湯」。種から蒔いて育てたという桂の並木が美しくて、思わず声が出た。ほかにも「もみじの湯」は1年中赤く色付いている紅猩々の先に、「どんぐりの湯」はどんぐりの木の森の先に、といった形で、近くの木立の種類が貸し切り湯の名前になっている。

まるでツリーハウスのような「かつらの湯」。階段を上り扉を開けると、巨石を自分たちで掘ったという露天風呂が。木立の上のほうだけが見える、高い位置からの景色も新鮮。

泉質はナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉だが、風呂によって引く源泉が少しずつ異なるので、湯触りなども少しだけ違う。黒っぽく見える湯は油臭がして、ツルツルな感触。

吊り橋を渡り、森の奥の奥にある「トチニの湯」へ

5つの貸し切り湯のうち、「もみじの湯」「どんぐりの湯」「トチニの湯」へ行くためには、落部川に架かる吊り橋を渡る。

吊り橋が大の苦手な私。高さはないが、これが結構揺れて、無理かもしれない、と最初は思った。けど、これを渡らないと温泉に行けないというのは強いもので、3つの貸し切り湯に入るために行って戻って都合6回も渡れば、最後はスタスタ渡れるように。

吊り橋を渡り、白樺並木を抜け、宿からは10分ほど歩いたところに「トチニの湯」の囲いが見えた。吊り橋の先にある3つの湯の入湯札には熊鈴が付きで、それぐらい人の気配のない森の中。

杉の丸太を削って造った湯船。その向こうには川が流れる。言葉はいらない。

湯船はもうひとつ。ほかのお風呂もそうだが、「トチニの湯」は特に自然の中に浸かる感覚が味わえる。

5つの個性ある貸し切り湯は、少しずつ数を増やしていったそう。「杉の湯」と「もみじの湯」は冬季閉鎖となるが、あとは冬も道のりを除雪して通年入れるようにしているとのこと。

このほかにも時間で男女入れ替えになる大浴場と露天風呂があり、1泊ですべて回ろうとすると忙しい。

朝夕の食事は個室の食事処で。貸し切り湯に行く時に通る、苔むす庭が窓から見える。夕食は鶏すきがメイン。朝食には、近くの浜で採取したという「みみのり(銀杏草)」という海藻のお味噌汁が出て、美味しかったので売店でお土産に買い求めた。

電車の遅れでチェックインが遅くなったが、なんとかお風呂も全部制覇できた。あまり予備知識を入れずに行ったので、油臭が漂う個性のあり過ぎるお湯にも驚いた。電車旅も楽しいが、やはりチェックインの13時から11時のアウトギリギリまでゆっくりしたいのが理想。今度は函館からレンタカーなどで来てみたいな。

銀婚湯

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野水 綾乃
温泉と旅のライター
栃木県を拠点に活動する温泉と旅のライター。古くからの湯治場や歴史を感じさせる温泉宿が好き。ひとりで泊まれる格安宿の魅力を発信。二ツ星温泉ソムリエ、温泉入浴指導員、塩原温泉まちめぐり案内人。
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