湯煙包む温泉街を歩いて貸切風呂へ【熱川温泉みはるや】
数十年前に取材で訪れた熱川温泉の宿がとても印象に残っていました。伊豆熱川駅のすぐ近くにあって、目の前には湯煙をもうもうと上げる温泉櫓が立っていて、そしてあの頃は珍しい酵素風呂もあったなと。それからずっと再訪できずにいたのですが、伊豆方面に行く用事があり宿を探していると、2022年に経営が変わって新しく「みはるや」としてオープンしていることを発見。思い出の答え合わせも兼ねて訪ねてみました。
ノスタルジックな海辺の温泉街の小さな宿
最寄りの伊豆急行線伊豆熱川駅。ホームからも海が見えます。
駅を下りると、湯煙を上げる温泉櫓が点在しています。その数、13基。温泉街の面積当たりの数では日本一なんだそう。約100℃の源泉があちこちで噴き出していて、温泉街全体に熱気が立ち込めています。
そして「みはるや」。伊豆熱川駅からすぐそば、見える位置にあります。目の前にある温泉櫓も記憶の通り。
歴史ある建物をモダンに活かす
館内は大正・昭和から受け継がれる建物の味わいを上手に活かしながら、モダンで明るい雰囲気にリニューアルされています。写真のラウンジでまずはウェルカムサービス。この時はニューサマーオレンジのフレッシュジュースと、同じくニューサマーオレンジの餡の最中でした。いつでも自由に飲めるコーヒーやお茶などもセットされています。
客室は全部で10室。ひとり旅なので、スタンダードな10畳和室を予約しましたが、広縁付きでゆとりを感じます。歴史を経た柱や梁を残して落ち着く空間に。
窓からは駅からも見えた温泉櫓とレトロな町並み。少し乗り出して左を向くと海も見えます。ここでのんびりお茶を飲んで過ごす時間が最高。
無料の二つの貸し切り露天と砂風呂
「みはるや」は駅前の温泉櫓の浜田温泉から源泉を引いています(玄関前の温泉櫓は向かいの国民宿舎のもの)。
嬉しいのが無料で貸し切りが可能な露天風呂が2つあること。まずは50分間無料で貸し切り利用ができる「はなれ」の露天風呂へ。宿からは歩いて3分ほど。駅を過ぎ、赤い橋を渡り、少し坂を登ったところ。部屋の窓からも見えた温泉櫓のたもとにあります。
小屋の扉を開けると、石で組まれた風呂がドーンと現れます。3~4人は足を伸ばして入れる広さで、これをひとりでも独占できるのはかなり贅沢。源泉が熱いため、じっくり浸かれる湯温に加水で調節されていて、ややとろみを感じます。
もうひとつ貸し切り可能なのが、こちらの野趣あふれる「南国野天風呂」。通常は男女入れ替え制ですが、19時~翌7時の間は35分間無料で貸し切りにできます。
このお風呂は記憶にありました。駅前とは思えないほどのジャングル感。創業時から生き続けているというゴムの木が頭上から根を伸ばし、よりワイルドになっていました。
昔あった酵素風呂はなくなっていましたが、砂風呂は健在。40分1500円で体験できます。
前身の宿時代からいらっしゃる熟練のスタッフが砂をかけてくれます。部屋一面に敷き詰められた砂は、下を流れる温泉を利用して温められているそう。熱すぎることなく、心地よい温度。
そのほか砂風呂と同じフロアに男女別の大浴場と露天風呂もあり、1日では足りないほど湯巡りできます。
個室でいただく伊豆の海の幸
料理は個室の食事処でいただけるので、ひとり旅でも気兼ねなく楽しめます。料理のランクによって宿泊料金が変わってきますが、いちばんお得なこはる会席プランでも、金目鯛や地魚のお造り、白魚の鍋など大満足の内容。
後から温かい状態で運ばれてくる金目鯛の煮付け。優しいお味が染みています。
朝は海までお散歩も
朝、目覚めるととても天気が良かったので、海まで散歩に出かけました。海までは徒歩5分ほど。ひもの屋と海鮮系の食事処、あとはホテルや旅館が数軒あるだけの小さな海辺の温泉街。朝は犬の散歩をする地元の方とすれ違うぐらいで、旅と日常の間にいるような感じ。
海岸に出て、生まれたての朝日を浴びてリフレッシュ。
宿に戻って朝ごはん。金目鯛の味噌漬け、わさび丼、自分で押し出すところてんなど、朝も伊豆ならではの味で楽しませてくれます。
駅までは徒歩1分ですので、あとは予定の電車の時間ギリギリまで宿でのんびり。2名1室なら1万円台、ひとりでも2万円台前半から泊まれるコスパの良さ、その上、小さな宿はらでなのおもてなしの心も感じられる宿です。
みはるや
静岡県賀茂郡東伊豆町奈良本971-1