山奥の湯治場で足下湧出だらけの露天巡り【元湯夏油・岩手県】 – 温泉会議
日常から距離を置き、温泉宿で過ごす自分時間。これなら比較的リーズナブルと思える宿を求めて旅する筆者が、価値あるひとり温泉を発掘していきます。

山奥の湯治場で足下湧出だらけの露天巡り【元湯夏油・岩手県】

温泉と旅のライター

私はひとり温泉の行き先に秘湯を選ぶことが多い。昔から秘湯の湯治場には各地からひとりで訪れる人が多く、現地で交流を深め、「また来年ここで会いましょうね」そんな会話を交わして別れる場所だったから、今もひとりで泊まりやすい雰囲気がある。

近年は秘湯の湯治場も様変わりしたところが多くなってきたが、ここ、「元湯夏油」ほど古い面影を留めているところはないと思った。こんこんと足下湧出で湧き続ける4つの湯も、ずっとずっと変わらない。

昭和の湯治場の賑やかさが宿る

東北新幹線北上駅から1日1便の送迎バスで約50分。このバスの運転手さんが愉快な人で、ずっと道中、観光案内をしてくれた。駅の近くの北上川は春は桜の名所であること、山に入ってから続くブナ林のこと、途中に遠望するお釈迦様が彫られているように見える岩を昔は目印としたこと、などなど。距離を感じずに宿に着いた。昨年まではもう1軒あったが、今年はとうとう一軒だけとなってしまったことも運転手さんに聞く。

客室は別館の6畳和室。旅館部の部屋はすべてバス・トイレなし。簡素な造りとなるが、ほとんどの時間をお風呂で過ごし、部屋には休憩に帰るぐらいだったので問題ない。

さっそく足下湧出の露天風呂巡りに出かけようと、建物の外に出ると、奥には湯治部の建物が続いていた。ひなびた風情がたまらない。このままであり続けてほしいけど、あまり泊まっている気配がないのが残念だ。足下湧出の露天風呂は湯治部を抜けた先にある。

ぬる湯から激熱まで、湯温も湧き出した自然のままで

元湯夏油の足下湧出露天風呂は現在4つ。以前は5つだったが、真湯の対岸にある目の湯が入れなくなっている。源泉が湧く場所がそのまま湯船になっているので、風呂ごとに少しずつ湯質や温度が異なっていて、50℃近い激熱の湯もある。女性専用のひとつを除き、あとは混浴で、それぞれに女性専用時間が設けられている。

まず入ったのは女性専用の「滝の湯」。湯小屋で覆われて冷めにくいため、ここの湯温がいちばん熱かった。

露天風呂群のいちばん奥にある「大湯」。古くからこの湯に入るために訪れる人も多いという特別な湯だ。

大湯の温度は47~48℃ぐらいか。最初はなかなか入れなかったが、一気に身体を湯に沈め、底からドクドク湧く熱さに慣れれば、なんとか1~2分は浸かれるようになった。そして出たあとのすっと熱が引く心地よさがクセになり、最後は激熱の湯でないと物足りなくなってしまった。

ご主人曰く、熱い湯に短時間入ることで細胞が活性化するのだそうだ。皮膚疾患を持つ常連さんは、大湯に入ると肌に膜ができて、そのまま半年ぐらい調子が良いそうで、半年ごとに湯治にやってきてはこの大湯に浸かるのだそうだ。その感じは分かる気がする。

こちらは「真湯」。大湯と同じぐらいの広さで、入りやすい温度。

こちらは、いちばんぬるい「疝気の湯」。湯船の底や岩壁から湯がポコポコと湧き出している様子が分かりやすかった。

女性専用の「滝の湯」でほかの女性ひとり客と仲良くなり、女性専用時間を狙って混浴の露天風呂を一緒に巡ったりもした。古くから湯治場ではこんな触れ合いがあったのかな、と想像する。

露天風呂の入浴は明け方から21時まで。夜のうちに清掃し、新しくお湯をまた溜めるので、常に湯が新鮮な感じがした。

大広間での夕食。野菜の天ぷらや茶碗蒸しはあとから運んでくれる。食事処でもひとり客の女性たちとおしゃべり。秘湯を守る会の宿の話などをしていたら、遠くの団体さんも話の輪に加わってきた。

「元湯夏油」の営業は、5月初旬から11月15日まで。半年ほどの営業だ。県内でも有数の豪雪地帯ゆえに、冬は雪崩の被害に合わないように露天風呂の屋根や柱を解体し、湯壺だけを残して半年間の冬ごもりに入るという。温泉に至る山道もガードレール代わりのロープなどもすべて外すという。秘湯の湯治場を維持する苦労を聞きながら、大変だけどどうか続けて欲しいと、帰りの送迎バスに揺られながら思った。

元湯夏油

野水 綾乃
温泉と旅のライター
栃木県を拠点に活動する温泉と旅のライター。古くからの湯治場や歴史を感じさせる温泉宿が好き。ひとりで泊まれる格安宿の魅力を発信。二ツ星温泉ソムリエ、温泉入浴指導員、塩原温泉まちめぐり案内人。
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