芸術と自然が感性を刺激する「界 仙石原」でアート湯治 – 温泉会議
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北の湯から南の湯から。日本全国の温泉を繋ぐ「湯戸端会議室」。温泉に浸って地元のレアな話が聞きたくなったら、この場所へお立ち寄りください。

芸術と自然が感性を刺激する「界 仙石原」でアート湯治

温泉と旅のライター

作家や芸術家がアトリエを構え、美術館や博物館も数多く点在する箱根の仙石原温泉。その仙石原でも高台の静かな場所に、「界 仙石原」はたたずむ。全室に備わる露天風呂やテラスから箱根の山々を見渡す雄大な景色は、箱根エリアでもそうない絶景だ。そんな景色と館内の至るところで出会えるアートに触れ、心の奥深くから満たされる湯治旅へ。

ここでしか出会えないアートに包まれる「アトリエ温泉旅館」

「界 仙石原」のコンセプトは「アトリエ温泉旅館」。玄関を入ると、左官職人の久住有生氏が手がけた巨大な土壁がゲストを迎え、エスカレーターに乗ってロビーに着くと、シンボリックなアート(写真)が目に入る。一本杉の原木をアレンジしたライトの下には、水盤と苔むした石。仙石原の力強い大地を表現したものだという。

界 仙石原でいちばん広い103㎡の別館スイート。アートと窓に広がる景色が呼応する

各客室もアーティストの作品で彩られている。アーティスト・イン・レジデンスで招聘した国内外12名のアーティストが、ここに滞在し、箱根で受けたインスピレーションを作品に込めたもので、部屋ごとに異なるアーティストの作品が飾られている。

私が滞在した和洋室には、女性アーティスト・田中沙樹さんのアートが壁を彩っていた。アーティストがここで感じたこと、作品に込めたこと、そして客室に泊まる人に向けたメッセージも部屋に置かれている。それを読みながら鑑賞すると、作品を通してアーティストとつながったような思いになる。

ベッドスペースとソファスペースの間に置かれた、小田原のガラス作家「ipada」のガラスアートも、時間帯によって異なる光の模様を天井に描き出してきれいだった。

全室大涌谷源泉の露天風呂付きで温泉三昧

「界 仙石原」は全室露天風呂付き。テラスの一角に備わる露天風呂からは、金時山など箱根外輪山の山々が目線の高さに見渡せる。湯船を満たすのは大涌谷から引くpH2.1の酸性-カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉。風を浴びてまた入るを繰り返し、結局、部屋の露天風呂ばかりに浸かっていた。

男女別の大浴場も用意されている。内湯の「あつ湯」が加水ありでかけ流しの温泉(部屋と同じく大涌谷源泉)、内湯の「ぬる湯」と露天風呂は真湯になる。温泉のにごりは薄いが、真湯とくらべるとやや白濁しているのが分かる。酸性泉は肌への刺激が強いため、真湯に浸かって洗い流すとちょうどよい。

アトリエライブラリーで自由な表現を楽しむ

ロビーの近くにあるアトリエライブラリーは、アートや建築に関する本を読んだり、約2000本の色鉛筆からスケッチブックにアートを表現できたりするスペース。立てた絵筆で仙石原の名所「すすき草原」を表現したもの、岩絵の具の原料が入った薬瓶で朝から夜までの時間の移り変わりを表現したものなど、空間を彩るオブジェも楽しい。

全国の「界」では、地域の文化を体験できるプログラム「ご当地楽(ごとうちがく)」を用意している。「界 仙石原」では、箱根をモチーフにした柄が描かれたものや無地の手ぬぐいに絵付けや色付けをする体験が無料でできる。

私が選んだのは、箱根にいる鳥たちが下絵で描かれたもの。型染め作家の小倉充子さんが手がけた下絵の手ぬぐいは、それ自体でかわいらしく、ほかにも大名行列、箱根と小田原の名物を散りばめたものなどが用意されている。

たくさん用意されたサインペンや色鉛筆を使って、思うままに色付けしていく。時間を忘れてしまうほど、気づくと夢中になっていた。

完成!私は写真を見ながら実物に近い色合いで色付けしたけど、感性の赴くまま、自由に色を入れていったっていい。それぞれに違った作品が出来上がるのが面白いところ。

料理は器や提供方法にも趣向を凝らして

「界 仙石原」は料理を楽しむ時間もアートになる。たとえば写真の先付は、サーモンと季節のフルーツを瞬間燻製した一品。蓋を開けた瞬間に大涌谷の噴煙をイメージしたという煙が広がる。

絵筆箱に見立てた器にお造りを。

メーンは雲丹出汁海鮮しゃぶしゃぶ。濃厚なウニとエビの旨味が溶け合うスープに、金目鯛やエビをさっとくぐらせていただく。特にウニの甘みが増して美味しい。

しめには素材の旨味が溶け込んだ出汁で仕立てた玉子雑炊。新たにウニもトッピングされ、濃厚な旨味が広がる。

朝ごはんも丁寧でしみじみと美味しく、地元のこだわりの食材や調味料がちゃんと活かされている。小田原の木桶で熟成させた味噌を使った味噌汁、竹かごの中の蒲鉾は、売店や駅のお土産で同じものを見つけて買って帰った。手前の鉄板の「桜海老のつくね芋ステーキ」はテーブルで焼き上げてくれるのもよかった。

界 仙石原

https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaisengokuhara
野水 綾乃
温泉と旅のライター
栃木県を拠点に活動する温泉と旅のライター。古くからの湯治場や歴史を感じさせる温泉宿が好き。ひとりで泊まれる格安宿の魅力を発信。二ツ星温泉ソムリエ、温泉入浴指導員、塩原温泉まちめぐり案内人。
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