雪国リトリート~音浴と温浴で調う~に参加して【越後田中温泉しなの荘】
「雪国リトリート®」とは、日本有数の豪雪地域であり、独自の文化を持つ雪国観光圏エリア(新潟県魚沼市、南魚沼市、湯沢町、十日町市、津南町、群馬県みなかみ町、長野県栄村)ではじまった滞在型プログラムのこと。
「地域を再生し、私を再生する」。私が惹かれたのは、雪国リトリートのこのテーマだった。この地域には、雪とともに暮らしてきた知恵と工夫が詰まっている。それを地域に暮らす人がガイドとなり、私たちに伝える。参加者である私たちは、ふだんの日常から離れて、雪国のくらしに触れることで、本来の自分を取り戻していく、というもの。
2月上旬、新潟県津南町の越後田中温泉「しなの荘」(宿の詳細は前回の記事で)を拠点にしたモニターツアーのテーマは「雪の奥信越!音浴と温浴で調うリトリート」。音浴とはなんだろう!? どんな時間が過ごしたか、時間を追って紹介していき、雪国リトリートの良さが少しでも伝われば嬉しい。
オリエンテーションと雪国のお茶飲みで語らう

雪国リトリートでは、みんなで語り合う時間と、ひとりで思考するソロタイムの両方がある。最初の種まきの時間では、このツアーに参加したきっかけや、いまの心と体の状態などを話して、お互いシェアする。真ん中は今回のリトリードガイドの関澤睦美さん。

今日明日と睦美さんが行う「音浴」の説明もここであった。
これは「シンギング・リン®」という楽器。金属に漆を塗ったもので、バチのようなもので叩いたり、ふちをこすったりすると、奥深い倍音を響かせる。実際みんなで音を出してみると、お寺で聞くおりんのようでもあり、大聖堂で聞くパイプオルガンのようでもある厳かな響き。この倍音が人間の体の水分などと共鳴するのだそうだ。

自分たちで作ったお漬け物などを持ち寄ってお茶を飲むのも雪国の文化。写真のあられと薬草茶は、隣の長野県栄村で自然派の農業をされている睦美さんの手作り。これが本当に美味しくて止まらない。
集落を散歩して雪とたわむれる

津南町在住のローカルガイド・照井麻美さんの案内で集落を巡る。雪国の暮らしはいろいろ助け合っていかなければならないので、どこも集落を形成していること、ここの集落は同じ苗字の方が多く、屋号で呼び合っていることなど、津南が大好きで千葉から移住したという麻美さんのお話には愛が溢れてる。

しばらく歩くと信濃川が見える大きな橋に出た。長野県で千曲川と呼ばれていた川が、ちょうどこのあたりで信濃川に変わる。風のない時間帯で、鏡のようになった川面にきれいな空の色が映っていた。

宿に戻って、2mほど雪の積もった中庭で雪遊び。誰の足跡もついていない雪面にダイブなんて、大人になってなかなかやる機会がないけど楽しい。参加者の中には、ウィンタースポーツも雪遊びもこれまでしてこなかったという人がいて、雪に対して漠然と怖さのようなものがあったそうだが、こうした時間を通して払拭されたとあとで話していた。
夜のシンギング・リン体験でいつしか夢の中へ

宿泊をともなう雪国リトリートだからできる体験が、この夜のシンギング・リンの音浴体験かもしれない。和紙のライト(麻美さんが自ら手すきした和紙でつくったライト)の灯りだけが揺れる空間にうつぶせになり、シンギング・リンが奏でる音をまさに浴びた。
気が付くと眠ってしまっていた。音色が体の奥に響いて作用するだけでなく、空間自体も浄化してくれるせいかもしれない。ふだん寝付きが悪いのだが、このあとも部屋で朝まで泥のように眠ってしまった。
朝の音響セラピーとパステルアート体験

夜は思い思いにひとりの時間を過ごし、2日目の朝。朝ごはんのあと、ふたたびシンギン・リンの体験。今日は大きなシンギング・リンを頭からかぶり、音を全身で浴びる。かぶったリンを叩いてもらうと、自分は音が響いているのに、まわりには何も聞こえないのが不思議だった。体の奥深くに倍音が響いて、ぽかぽかと熱くなったと話す人も。

つづいてパステルアート体験。無数にあるパステルの色の中から好きなものを選んで削り、それをコットンに含ませて紙に描いていく。

私が描いた2枚。あまり何も思い浮かべず、手の動くままに描くのを心掛けた。

参加者のみなさんの作品を展示。色調や描き方もそれぞれ違うけど、なぜだかまとまりがあって、1つの絵本のようになった。

完成したところでお昼ごはん。塩おにぎりと、ゴボウを揚げたもの、そして漬け物たち。朝ごはんをしっかり食べたあとだけど、美味しくてペロリと食べてしまう。
雪の壁に囲まれた集落を歩く

午後は昨日行かなかった駅のほうへ歩いてみることに。2mぐらいの高い雪の壁に囲まれた道だけど、これれっきとした集落の中の路地で、両側には民家が点在している。

5分ほどでJR飯山線の越後田中駅に着いた。1日上下とも8本しか通らない無人駅。これでよく走れるなと思うぐらい線路が雪に埋もれてる。

線路を超えてもうしばらく歩くと、小さな神社を発見。鳥居へ行くのも雪で埋もれていたけど、麻美さんが先頭を切って雪を踏み固めて道を作ってくれた。社までは春まで行けず。お正月だけはみんなで雪を踏み固めてお参りできるようにするのだそう。
お気に入りの場所でソロタイム

最後、しなの荘に戻って、それぞれの気に入った場所で自分の時間を過ごす。私はひとりでまた露天風呂に浸かってみた。見上げるとパステルアートで描いたような、白く淡い太陽がぼんやりと光っていた。
いつもの時間に追われる毎日。そこから少し離れて、余白のある時間を過ごすことの大切さに気付かされた。また日常に戻っていくわけだけど、そこで頑張るための何かをそれぞれが得て帰れる。
いかがでしたでしょうか。「雪国リトリート」について気になった人は下のホームページをぜひ覗いてみてください。雪のリトリートと緑のリトリートがあり、季節に合わせたプランが用意されています。