深い雪と津南のごっつぉに癒されて【越後田中温泉しなの荘】
毎年3メートル近く雪が積もる新潟県津南町。そこに越後田中温泉の一軒宿、「しなの荘」はある。訪れたのは2月上旬。すべての音を吸収するような真っ白な深い雪に包まれる時間が、心をリセットさせてくれる。
豪雪地帯をバスは進んで

越後田中温泉「しなの荘」へ行くには、越後湯沢駅から「清津峡渓谷トンネル」で有名な清津峡を経由していく路線バスが便利。新潟県の中でも豪雪で知られる十日町などを通るので、進むにつれて積雪は深くなっていく。最寄りの「小下里」バス停に着くと宿の送迎車が待ってくれていた。東京からの新幹線、そしてバスと両方とも1時間ぐらいで、2時間ちょっとで雪国の中にいた。

春は桜並木が迎える「しなの荘」の玄関。枝に積もった雪が白い桜のよう。
歴史を残しつつリニューアルされた客室

ひとり泊でも利用できる客室は11室中7室。私が利用したのは、2024年3月にリニューアルした別館の客室のひとつの「桔梗」だ。リニューアルされているとはいえ、昭和時代からの建具や床の間の雰囲気をそのまま残していてとても落ち着ける。

ふだんは庭と信濃川が眺められるそうだが、この時期はすべてを雪が覆い尽くしていた。時が止まったかのような静かで穏やかな雪景色を眺めて、ひとりの時間を楽しむ。
ぬるめのやさしい自家源泉が心をとかす

しなの荘の温泉は自家源泉のアルカリ性単純温泉。源泉温度が31℃と低いため、加温と循環がされているが、pH9.2の少し褐色を帯びた湯は、入った瞬間にニュルニュルとした感触に包まれる。
とくに気に入ったのが、2人入ればいっぱいの小ぢんまりとした露天風呂。湯船の大きさからか、内湯よりも湯の色が濃く見える。ここを独り占めにしながら雪景色を眺める時間が最高だ。雪も風も止むと、本当に時が止まったかのように景色が動かなくて、鳥の声もしない。その中で滔々と湯が流れる音が静かに響いていた。
雪国の知恵と恵み、津南の食材が彩るごっつぉ

「しなの荘」のお料理は、雪国・津南の地の味覚のオンパレードだった。
食前酒の代わりにこの日、登場したのは雪下人参のジュース。雪の下で収穫しないまま冬を越す雪下人参は、津南が誇る名物野菜。雪の下のほうが、温度が一定で凍らず、水分があるので、フルーツのような甘みがあって、みずみずしい人参の味になるのだそうだ。

鍋は津南豚の餅入り鍋。お餅も津南産。

ふきのとうなどの野菜の天ぷら。この中にあった津南産の「竜のひげ」というニンニク丸ごとの天ぷらが美味しかった(奥に茶色のひげのような根っこが見えるもの)。龍ヶ窪の水という名水で水耕栽培したものらしく、変なえぐみがなく、ニンニクのいい香りだけが食べると口いっぱいに広がり、サクサクの根っこも美味。

そしてもはや何もいらない、そのままがメインディッシュになる魚沼コシヒカリも津南産。たくさんの雪と雪どけ水がもたらす津南の恵みを存分に味わえた。
リトリートにふさわしい空間

館内はすべて畳敷きになっていて、長い廊下のいちばん奥には、景色を眺め、ひとり無になれるこんな空間が用意されていた。ゆずやヒバなどの和精油をブレンドしたオリジナルのアロマオイルが常に焚かれていて、別館の客室とお風呂を行き来するたびにふわっと香って癒された。
今回「しなの荘」に泊まったのは、「雪国リトリート」というプログラムの一環でした。そのほかの時間にどんな体験が待っていたかは、次の記事でご紹介します。
しなの荘
新潟県中魚沼郡津南町上郷上田乙2163
https://shinanoso.com/