新潟の三角だるまと五十沢温泉
温泉と民藝を愛するライターが綴る連載。今回は新潟県南魚沼市の「五十沢温泉ゆもとかん」で出会った三角だるまの話。
頭が尖った円すい形のだるま。起き上がりこぼしになっていて、ちょこんと指で押しても倒れず、何度だって起き上がる。
この三角だるまは新潟県を代表する民芸品で、かつては県内各地で生産され、市や縁日で販売されていた。七転び八起きの縁起物であり、農村では蚕がよく起きて良質な繭が採れるように、漁村では舟が嵐にあっても早く起き上がれるように、そして病気や災いから早く再起できるようにと願いをかけて飾ったものだ。
私も以前どこかで赤や青の三角だるまを見たことがあった。でも、五十沢温泉ゆもとかんで売られていたのは、淡いグリーン色。「若芽色と言うんです」と取締役の小澤陽香さんが教えてくれた。
若芽色。日本の伝統色のひとつで、植物の若い芽のような淡い黄緑色を指す。五十沢温泉ゆもとかんでは、創業時から若芽色を包装紙などに使ってきた。
この三角だるまは、県内の民芸品や工芸品を日常に溶け込むアイテムとして再デザインした「ニイガタスーベニアクラブ」とのコラボ商品。その場所が長年大切にしてきた色を温故知新的に活かしつつ、今のライフスタイルに合う優しい色合いに仕上げている。
県内屈指の混浴大露天風呂でゆったり
五十沢温泉は、ゆもとかんと、ここから源泉を引く別の宿泊施設の2軒だけの温泉地。以前はゆもとかんの元湯(旧館)も営業していたが、2023年末で閉鎖になった。温泉の歴史は比較的新しく、1977年に融雪用の井戸を掘ったら湧出したものだという。
大きな岩で仕切りが付けられた混浴の内湯。硫化水素の香りと、あふれる湯の豊富さを感じる。この湯の中を進んでいくと、
壮観な大露天風呂が広がっている。内湯のある建物を囲むように湯が続いていてとにかく広い。今回訪問したのは夜だったが、以前昼間に訪れたときは周囲の山々が見えて、混浴であることも忘れて立ち上がって眺めたのを覚えている。
泉質はpH9.4のアルカリ性単純温泉。湯量は2本の源泉を合わせて毎分0.5トン近くあり、巨大な露天風呂をかけ流しで満たしている。シャワーも温泉で、髪を流しながらも硫化水素臭に包まれて幸せな気分だ。もう1か所、男女別の内湯(女湯は露天風呂付)もあり、地元の人などにはそちらのほうが人気だそう。
食事の提供スタイルが2024年から変わり、日帰り入浴客も利用できる「おかわり食堂」で定食や郷土色のあるおつまみが注文できる。仕込める時にだけ登場するこだわりのラーメンも人気だとか。
熊やパンダのはく製が迎える昔ながらのロビー。時代に合わせてスタイルを変えながらも、変わらない懐かしさのある宿。三角だるまなどの商品は、奥に見えるおみやげコーナーで販売している。
五十沢温泉ゆもとかん
新潟県南魚沼市宮17-4
今回の限定カラーの三角だるまの販売は、五十沢温泉ゆもとかんと上越市歴史博物館ミュージアムショップの2店舗のみ。