湯船の真横で湧く極上ぬる湯。湯岐温泉「和泉屋旅館」
福島県塙町にある湯岐温泉。「ゆじまたおんせん」と読みます。
福島ですが茨城との県境に近く、私の住んでいる栃木の県央部からは2時間と少し。東京方面からは栃木経由でも福島経由でも下道の距離が長く、少し遠く感じる場所かもしれません。
湯岐の由来は、源泉が2か所から分かれて湧いていることから来ています。現在2軒の宿が残っていて、歴史ある1つ目の源泉の岩風呂は「山形屋旅館」に、2つ目の源泉の「鹿の湯」は「和泉屋旅館」にあります。どちらも花崗岩の割れ目から自噴する温泉です。
どちらに泊まるか迷いましたが、今回は名湯と名高い「鹿の湯」に心ゆくまで浸かりたくて、ぬる湯が恋しくなる梅雨のある日、和泉屋旅館に出かけました。
静寂に癒される湯治宿
もうすぐ湯岐温泉というところで道路脇に突然現れた「不動滝」。梅雨のジメジメ感を吹き飛ばす清涼感のある風景に迎えられました。
車1台がやっと通れる坂道を登ると、ほどなくして「和泉屋旅館」がありました。そのまま坂道を進むと、もうひとつの旅館「山形屋」があります。
客室は予約していた部屋よりも少し広い部屋にご案内いただきました。ドアを開けるとまずは6畳の居間。2方向の窓から周囲の緑が飛び込んできます。
隣にもうひとつ8畳間があり、あらかじめ布団が敷かれていました。元は別々だった部屋をつなげたような造り。寝室側の入口だった場所にトイレと洗面がありました。
清らかな湯があふれる「鹿の湯」へ
和泉屋旅館のメインの浴場「鹿の湯」。混浴ですが、女性専用時間(この日は16時~17時と20時~21時の2回)が設けられていて、その時間をめがけて入浴しました。
大きいほうの湯船が「鹿の湯」源泉。小さいほうは、もうひとつの男女別の内湯「八幡の湯」でも使われているボーリング泉が上がり湯として注がれています。
奥の湯桝の中にある花崗岩の割れ目から湧いたばかりの湯が大きな湯船のほうに注がれています。人が入ってあふれてもすぐに湯が満たされるほど湯量は多く、常に湧きたてのピュアな湯に包まれている感じがたまりません。
湯温は震災以降に少し上がったとのことですが、チェックイン前にt立ち寄りで入った山形屋旅館の岩風呂よりもぬるく(38度ぐらい?)、長く浸かっていられる感じでした。そして夜のほうがさらにぬるく感じます。
ぬる湯にしては熱めなので、紅葉の時期や初冬に訪れるのもいいのではないかと思いました。
こちらは男女別の「八幡の湯」。元は混浴だったのが、真ん中で仕切られていますが、浴槽はひとつでお湯が中でつながっています。鹿の湯よりは温かいがこちらもぬるめ。
海山の幸を取り入れた田舎料理
食事は1組ごとに個室が与えられ、朝夕ともそちらでいただきます。元は客室だったのかな?というお部屋です。一人旅でも個室となるので、人目が気にならずいいですね。
夕食は、ふきの煮物、じゃがいもの小芋を丸ごと煮たもの、梅の蜜煮など、素朴でお酒の進むような料理が少しずつ小鉢にのせられています。メヒカリとユキノシタの天ぷらなどが後から運ばれてきました。
通常プランにプラス1000円のステーキプランでは、地元塙町産のはなわ牛のステーキが登場。これで1人前!?と正直驚きましたが、脂がさらりとして、美味しいお肉でした。
朝食では、プラス250円で釜炊きごはんを用意してくれます。お米は直接農家さんから仕入れる郡山市のブランド米「あさか舞」。時間に合わせて炊き上がるように準備してくれていて、うっすらとおこげもできたふっくらごはんは、もうこれがメインディッシュではと思えるほど美味しかったです。
神経をゆるめる湯
玄関には昭和25年の温泉分析書が掲示されていました。適応症の項には、不眠症、脳溢血後の半身不随などとあります。湯岐温泉は古来「中風(脳卒中)の湯」として知られ、江戸時代後期の水戸藩士で儒学者の藤田東湖も中風の療養でこの地を訪れていたそうです。
いつも宿に泊まってもやけに早く目覚めてしまったりするのですが、この日は普段よりも深く眠れたような気がします。神経に作用する湯岐の湯にゆっくり浸かったおかげでしょうかね。
湯岐温泉 和泉屋旅館
福島県東白川郡塙町湯岐17