湯治のある暮らし
「帰ってきました!」「ここに来るまでと思って仕事を頑張りました」「忙しいからこそ無理してでも来ました」「今回は初めて旦那を連れてきました」「いつも写真を見て来たいと言っていた友人です」などなど。。。
皆さま、暖簾をくぐり、目があった途端、弾む声で “湯治時間”の始まりの喜びを口にされます。
そして、お立ちの時には、「次の予約は・・・」「もっと長く来なきゃ」「もう待ち遠しくて」と次回への期待と希望とお約束とを残してくださいます。
「やっぱり来てよかったぁ、楽しかったぁ」と言われる奥様に、旦那様が横から「何もしてないんだけどね」と笑いながらおっしゃる微笑ましさ。ここがいつでも自分の居場所である安心感と、何にもしなくても愉快な気分が腹の底から湧いて来るその感じ!いいなぁ。
うれしいお声をたくさん浴びながら、柳屋が提案してきた「湯治のある暮らし」をすっかり実現されている方々が、もうこんなにたくさんいらっしゃることに気づきました。
今となっては、「暮らしのリズムに湯治があることはどれほど豊かなことでしょう」と、こちらが羨ましくなる程です。体のための湯治も大事だし、心のための湯治も大事。
ゆったりと呑気さを愛でる宿であること。
ここがご自分の居場所として戻って来る宿であること。
そのために柳屋も魅力的でありたいし、鉄輪のまち全体も楽しんでいただきたい。
そんなことを考えながら柳屋を育んできて八年となりました。
柳屋の頭に「湯治」をかぶせたのは、その言葉の温もりに憧れがあったから。そして「湯治 柳屋」と名付けてみると、それが自分たちのミッションであることをはっきりと自覚しました。柳屋のお湯はやわらかくて美味しくて。こんな豊かなお湯を預からせていただいたのだから、それを分かち合うのが使命なのだと、今でも(これだけは)真面目に思っております。
時に、お客様のステキなお寛ぎのお姿に、「そうか、そういうことか!」と私たちが気づきをいただきます。そして、そんなご滞在をいつでもご用意できる場所であるための努力を、楽しみながら続けることができています。
柳屋に滞在することで自分に優しくなったり、気持ちよく自分に出会い直したり。自分のことをもっと好きになってほしい。どんな時でも、必ずお湯は優しく私たちを受けとめて、そっと抱きしめてくれますから。
元気でいたい、笑っていたい、朗らかでいたい、美味しいものを食べていたい、きれいでいたい、ほのかな愛に包まれていたい、だれかと緩やかにつながっていたい・・・。
そんな湯治のある暮らしを提案する日々をつづっていきたいと思います。
そんな願いをいつでもこのお湯が叶えてくれるのですから、こんな幸せなことってないと思います。モヤモヤを「お湯に流して、湯気に放つ」ことを知る、ご機嫌な人がいっぱいの2022年の春でありますように。