ひとり専用客室と湯滝の名湯にくつろぐ【白布温泉 湯滝の宿西屋】 – 温泉会議
日常から距離を置き、温泉宿で過ごす自分時間。これなら比較的リーズナブルと思える宿を求めて旅する筆者が、価値あるひとり温泉を発掘していきます。

ひとり専用客室と湯滝の名湯にくつろぐ【白布温泉 湯滝の宿西屋】

温泉と旅のライター

山形県米沢市。私の住む栃木からは新幹線1本で1時間20分ほど、東京からも2時間で行くことができる近い東北。その米沢駅からバスで約40分、白布温泉で唯一茅葺きの建物を残す「湯滝の宿西屋」を訪ねました。コロナ禍につくったというひとり旅専用の客室をはじめ、旅好きのポイントを押さえたサービスの数々も魅力の宿です。

陰影の美しい館内とひとり専用客室

湯滝の宿西屋は、700年前の白布温泉開湯のすぐ後から営む歴史ある宿のひとつ。平成12年までは隣に茅葺き屋根の旅館がもう2軒並んでいましたが、今は西屋だけが茅葺きの建物を残しています。

いちばん古い茅葺きの母屋は今から約200年前、江戸時代の文政年間に建てられたものだそう。母屋にはロビーやフロントがあります。そこから続く本館も築100年ほどになるといいます。

飴色に光る柱や床、そこに灯る照明が美しい陰影をつくる館内。どこもかしこも美しく磨かれていて、素足で歩いても問題がない。

ひとり専用客室。トイレや洗面は共用。エアコンはなしだけど、ストーブがある。

ひとり泊専用客室のひとつ「紅花」。6畳和室にベッドがしつらえられています。床の間と窓際のテラスのようなスペースもあり、ゆとりを感じさせます。

女将の遠藤央子さんの発案で、2022年よりベッドをしつらえた1階の3室を、ひとり泊限定の客室として通年泊まれるようにしたのだそう。ほかにも冬季などの期間限定でひとりでも泊まれる部屋が増えるかもとのことでした。少しずつ趣が異なるので、何度か部屋を変えて泊まってみるのも良さそうです。

轟音を響かせる江戸時代から変わらない湯滝風呂

湯滝風呂へ向かう渡り廊下。足元を浴槽からあふれた源泉が流れる

部屋でしばしくつろいだら名物の湯滝風呂へ。

湯滝風呂。昔のままの浴室にはカランもない。

江戸時代中期(1700年ごろ)に造られたという湯滝風呂。巨大な御影石を組み上げた湯船に、奥から湯滝となって注ぐ温泉が絶えずあふれます。とにかくかけ流しの量が多く、湯船に留まる間もなく流れていくという感じ。

豪快な湯滝を腰や肩など気になる部分に当てて浴びます。高温の源泉を沢水、この地の山の恵みである2つを合わせて温度調節しているという湯滝。ほんの少しだけ刺激のある絶妙な熱さが体の芯まで届き、体が活性化されてすっきりとするような心地がします。

その湯滝が流れ着く御影石の湯船。温泉成分で黒くなり、角がとれて肌のあたりも優しい湯船に、心地よい温度の湯が絶えずあふれ、しばしまどろんでしまいます。

郷土の味とフリードリンクが嬉しい夕食

夕食はいくつかのプランがありましたが、いちばん人気だという米沢牛すき鍋のプランで予約していました。

すき焼きは特製の味噌だれがベース。まろやかなコクのある味わいで、とろけるような米沢牛の肉の美味しさを引き立てます。

セルフで好きなものがいただける「本日のおばんざい」

夕食はハーフバイキング形式になっていて、メインとなる料理のほかに、日替わりのおばんざいがセルフで自由に楽しめます。この日は山形名物の玉こんにゃくなども。

燗酒も夕食時はフリー

さらに嬉しいのが、夕食時に飲めるドリンクがほぼフリーなこと。地酒、ワイン、ビール、缶チューハイ、ノンアルコールドリンクなまで、種類がとにかく豊富。料理に合わせて気兼ねなくいろんなお酒を楽しめます。

目線が気にならないようについ立てを立てるなど、食事処の席の配置にも配慮があり、ひとりでもゆっくり食事を楽しめました。

朝は看板猫たちがお見送り

柔らかな毛並みの、きじしろ猫のかぐらくん

朝、ロビーに行くと、2匹の看板猫ちゃんたちがご出勤。黒白柄のおんでんくんと、きじしろのかぐらくん。2匹とも隣の福島市で生まれ、縁あって旅館にやってきた兄弟猫なのだそうです。おとなしくなでなでさせてくれて、帰るのが名残惜しくなってしまいます。

湯滝の宿西屋

山形県米沢市関1527

https://nishiya-shirabu.jp/
野水 綾乃
温泉と旅のライター
栃木県を拠点に活動する温泉と旅のライター。古くからの湯治場や歴史を感じさせる温泉宿が好き。ひとりで泊まれる格安宿の魅力を発信。二ツ星温泉ソムリエ、温泉入浴指導員、塩原温泉まちめぐり案内人。
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