やさしく微笑む恵比寿さま湯口【鶴亀温泉】
恵比寿様の口からは、サラサラとフレッシュな源泉を投入。上唇に大人しめにこびりついた析出が愛らしいてす。
戦前建築の「鄙びた」ノスタルジックな温泉
熊本県の人吉市は、市街地に良質な温泉が湧き、旅館や共同浴場、銭湯などで楽しむことができます。今回ご紹介する「鶴亀温泉」は、そんな人吉市の落ち着いた住宅街の中にたたずんでいます。
建物はなんと昭和一桁代に建築されたものだそう。木々に囲まれて、ほんのり色褪せた外観は、初めて訪れたのにどこか懐かしさを感じます。周りの住宅とは一線を画す雰囲気で、ここだけ時代が止まっているかのようでした。
館内も外観同様のノスタルジック空間。まさに鄙びた温泉です。まるで映画のセットのような昔ながらの脱衣所に感動です。
昭和33年と手書きで書かれた温泉分析書や、昭和24年の入浴の心得、木枠で囲われてやさしい文章であおってくる質屋や金融の案内板も、この空間を彩ってくれています。
琥珀色の甘いモール泉がかけ流し
浴室は男女別の内湯のみ。コンクリート打ち放しのシンプルな作りですが、年季の入った木枠の窓と相まって、あたたかくレトロな風情を醸し出しています。
泉質は、ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉。もちろん、加水・加温・循環・消毒なしの完全かけ流しです。
ほんのり琥珀色の透明なお湯は、夏の雨上がりの葉っぱのような甘いモールの香りです。その奥には、ほんのり、でも濃厚な硫黄がいて、最後にはさわやかに金気が抜ける極上のアロマテラピー。ここで深呼吸すると、天国へトリップしてしまいそうな癒しの香りです。
肌触りはツルツルでスベスベでヌルヌルでトロトロ。しばらくつかっていると、全身にプルプルとお湯がまとわりつく至福の感覚です。
湯口はやさしく微笑む恵比寿様
そんな極上のお湯を吐き出す湯口さんは、七福神の一角を担当する「恵比寿様」。やさしく微笑むそのお姿は、眺めているだけでご利益ありそうです。ありがとうございます。
真っ白いお顔は、口周りだけ源泉のおかげで黒く変色してオシャレ。上唇にはちょびっと控えめに析出物がこびりつき、可愛らしいですね。
風情・湯質・湯口と三拍子揃った奇跡的な温泉。この空間にしばらくいると、恵比寿様が「ずっとここにいれば?」と語りかけてくれるような感覚に陥り、もう戻れないファンタジーな世界に行ってしまいそうです。このまま戻れなくなりたい。
ちなみに女性用のお風呂は「大黒様」湯口なのだそうです。なんとかして、いつかはそちらにもお伺いしたいものです。
温泉情報
【鶴亀温泉】
住所:熊本県人吉市瓦屋町1120-6
電話:0966-22-3221
URL:https://kumamoto.guide/yubijin/spots/detail/19298
泉質:ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉(低張性 弱アルカリ性 高温泉)
源泉温度:53.9℃
pH:7.7
湧出量:160ℓ/分(動力)
加水:なし
加温:なし
加温:なし
消毒:なし
利用状況:かけ流し
※訪問時の情報です(2019年5月)
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