VOL.03 雄阿寒岳と阿寒湖温泉 – 温泉会議
温泉取材歴40年余の筆者のライフワーク「温泉百名山」が4年がかりで完結。2022年10月26日に書籍刊行予定。発売に先駆けて書き切れなかった取材余話をつづります。

VOL.03 雄阿寒岳と阿寒湖温泉

温泉紀行ライター・山と温泉の旅人
阿寒湖畔から眺望する雄阿寒岳

雄阿寒岳(おあかんだけ)  標高1370m 日本百名山

2020年9月5日の夕方、私は阿寒湖畔の「温泉民宿山口」にいた。今回の北海道遠征の一番の目的である雄阿寒岳登頂のためである。

深田久弥氏の『日本百名山』では「阿寒岳」というタイトルで、雄阿寒岳とも雌阿寒岳とも特定していない。阿寒の最高峰の雌阿寒岳には入山規制中で登れず、実際に登ったのは雄阿寒岳だったので「阿寒岳」としたようである。なので、愛好家の間では雄阿寒岳と雌阿寒岳の双方に登らないと阿寒の山に登ったことにはならないと言われている。私は2016年夏に「日本百名山」完登の一環として雌阿寒岳には登っていたが、「温泉百名山」ではやはり雄阿寒岳も加えないわけにはいかない。

阿寒横断道路(国道241号)の双岳台から見た雄阿寒岳。左後方は雌阿寒岳

登山口は阿寒湖東端に当たる滝口。阿寒湖の流水口、阿寒川の源流部である。トドマツなどの深い針葉樹林帯の中、太郎湖のほとりを過ぎ、次郎湖を左の樹間に見下ろしながらひたすらの登りが続く。

五合目付近から望む阿寒湖と雌阿寒岳

普通の山の八合目付近に当たるという五合目付近で、ようやく視界が開け、眼下に阿寒湖、その背後に噴煙を上げる雌阿寒岳が望めた。ここを過ぎると、かつて気象観測所があったという広場状の尾根の八合目。

八合目付近から望む雄阿寒岳

いったん噴火口跡を左に見下ろす鞍部の九合目まで下り、そこからひと登りで標高1370mの雄阿寒岳山頂だ。

大パノラマが広がる雄阿寒岳山頂
雄阿寒岳山頂からペンケトー、パンケトー、知床方面を望む

山頂からは、阿寒湖や雌阿寒岳、眼下にペンケトーとパンケトー、遠く知床の山々が眺望できた。コースタイムは登り3時間30分、下り2時間30分。

雄阿寒岳山頂で「いいゆ!」

阿寒湖温泉

「あかん遊久の里鶴雅」の露天風呂から望む雄阿寒岳

阿寒湖温泉は、阿寒湖畔に大型ホテルや高級旅館、店舗が建ち並ぶ道東きっての一大観光地だ。大型ホテルや観光旅館にも泊まったことがあるが、2016年に雌阿寒岳に登ったときに見つけた「温泉民宿山口」を以来の定宿としている。

温泉民宿山口の外観
温泉民宿山口のくつろげる客室

阿寒湖温泉は単純温泉が中心だが、この宿で引くのはナトリウム・マグネシウム・カルシウム-炭酸水素塩・塩化物泉の濃厚な成分を含む別源泉。家族風呂規模の男女別の湯船に、惜しげもなく熱い源泉がかけ流されている。

名湯が堪能できる温泉民宿山口の内湯
お風呂の注意書き

そして、切り盛りする円城寺康子女将の心温まる接客と手作り料理、びっくりするほどの安価な宿泊料金が魅力である。

.温泉民宿山口の円城寺康子女将
女将の手作り料理が並ぶ夕食の一例

2016年には北海道の「日本百名山」完登を目指して山友の義広勝氏と日高山脈の幌尻岳から下山して泊まったが、同じ日程で幌尻岳に登っていた東京在住の岡村一幸・秀美夫妻も偶然「温泉民宿山口」に宿を取っていた。その出会いが、のちに平ヶ岳、火打山、立山、剱岳の「日本百名山」にご一緒することになったのだから、縁とは不思議なものである。ちなみに、このときの雄阿寒岳登頂は栃木県の塩原温泉郷・赤沢温泉旅館館主の遠藤正俊氏と登り、下山後も連泊した。

阿寒湖温泉 温泉民宿山口

☏0154-67-2555◆泉質=ナトリウム・マグネシウム・カルシウム-炭酸水素塩・塩化物泉◆源泉温度=56.2度◆電車/JR根室本線釧路駅からバス約1時間50分(釧路空港からバス1時間37分)、阿寒湖温泉BT下車徒歩約15分◆車/道東自動車道足寄ICから約1時間

飯出敏夫
温泉紀行ライター・山と温泉の旅人
1947年群馬県生まれ。温泉&温泉宿の取材に特化して40年余。16年に登り残した「日本百名山」41座の完登を決意し、17年に70歳で「日本百名山」完登。翌年からライフワークとして「温泉百名山」選定登山に取り組み、21年秋に目標を達成。22年10月26日に一冊にまとめた著書を発売予定。日本温泉地域学会、日本旅のペンクラブ、温泉達人会会員。温泉達人コレクションhttp://onsen-c.com/ 発信中。
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