VOL.02 斜里岳と斜里温泉
斜里岳 標高1547m 日本百名山
斜里岳は知床の玄関口である斜里町のおそらくどこからでも仰ぎ見られる、美しく裾野を広げるコニーデ型の火山だ。斜里周辺の人々にとっての「ふるさとの山」である。
2016年に登り残した「日本百名山」完登を志し、その年に北海道の未踏の4座に遠征したが、悪天候のため斜里岳だけが残った。翌17年、この山に登るためだけに女満別空港までの早割航空チケットを購入。6月19~21日の2泊3日の日程を組み、2日目か3日目のどちらか好天の日に登ろうという賭けのような計画だった。
運良く、2日目に絶好の好天に恵まれ、無事登頂できた。斜里岳は登りに沢登り旧道コース、下山に尾根を歩く新道コースを採った。
沢を詰める旧道コースは、いくつもの滝を高巻きしたり滑滝を登る。沢が尽きて新道コースと合流すると、あとは山頂まで急登が続く。
大きな雪渓を登り、山頂へ続く尾根上に着けばひと安心。
山頂からはオホーツク海や知床連山が一望でき、下山の新道コースから振り返ると斜里岳の全容を望むことができた。
コースタイムは登り3時間・下り2時間30分。筆者は快晴をいいことに休憩や昼食に2時間以上を費やしたので、合計8時間30分もかかった。
斜里温泉
斜里岳登山口近くには清里温泉というのもあるが、ここはやはり名称からしても斜里温泉にしなければならない。この斜里温泉、当時は知名度が低く(いまもそれほど高くはない)、載っていない道路地図もあるほどの存在だった。
知床に行くたびに、道路沿いに出る「斜里温泉湯元館」の手製風の看板が気になっていた。湯元館という名称に惹かれるではないか。斜里岳に登る2年前だったか、機会を得て風呂だけ入りに立ち寄ってみた。
斜里町郊外にポツンと建つ一軒宿で、旅館と民宿の中間といった佇まい。館内はというと、まったく洒落た雰囲気はなく、北海道特有のライダーご用達のような簡素な造りだ。料金体系を見ると、工事関係者の長期滞在も多いようで、驚くほど安価な料金設定になっていた。まさに登山のベースとしても気兼ねなく泊まれる印象だ。
さて、肝心の温泉だが、これが期待以上の素晴らしいモール泉だった。もちろん源泉かけ流し。思いがけずに、こういう良泉に巡り合えるのが北海道ならではの醍醐味というものであろう。
湯元館が温泉掘削に成功し、開業したのは1976(昭和51)年。風呂は大きな岩風呂(男湯)の第1浴場と男女別内湯の第2浴場がある。筆者が泊まった際、岩風呂は昼間は別料金の貸切専用(30分1200円、最大5名まで)、日帰り入浴終了後は宿泊客に開放されるシステムだったが、この原稿を書く際に確認したところ、現在は岩風呂は男湯に変更、女湯は湯船が2つある第2浴場だけだそうである。あの岩風呂に女性が入れないのは著しく公平を欠く。男女時間交替制にするべきではないかと強く思う。ちなみに、日帰り入浴は400円(7:00~20:00)で、当時と変わっていない。
建物は順次建て増しした4棟があり、部屋は本館客間3室、ビジネス館8室、温泉付きコテージ1室という構成。斜里岳に登った際はビジネス館に連泊したが、1泊2食付き5000円程度という驚くべき安価だった。
ただし、コロナ禍以降の現在は食事の提供を中止し、素泊まりのみとのことだった。素泊まり料金の本館客間6000円は普通だが、ビジネス館3300円(本館客間・ビジネス館ともにハイシーズンは割り増しあり)は安いのではないか。飲食物の持ち込み自由で、自炊設備も完備している。
斜里温泉 しゃりおんせん 斜里温泉湯元館
☏0152-23-3486◆泉質=ナトリウム-炭酸水素塩泉◆源泉温度=55.5度◆電車/JR釧網本線知床斜里駅から徒歩25分◆車/女満別空港から約1時間15分、旭川紋別自動車道遠軽ICから約2時間30分 ※斜里温泉から清岳荘下の駐車場まで車で約50分