自然の恩恵と驚異と苦労話 – 温泉会議
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『現代湯治』を複数のメンバーが語り合うように記事を執筆します。温泉でストレスを放電、心をふわりと軽く。ひとりでもふらりと行ける温泉宿の毎日をのぞいてみませんか。

自然の恩恵と驚異と苦労話

若旦那

自然環境に恵まれた地域では、温泉という癒しの宝が存在します。しかし、一方で自然は驚異的な力を持ち、最近では温暖化の影響による集中豪雨やゲリラ豪雨が頻発し、急激な水面の上昇や鉄砲水などの自然災害も増加しています。湯守として、温泉の維持管理、宿の管理はもちろんのこと、自然の恩恵と脅威の両面を冷静に観測し、危険を察知する役割と責任は年々増しているように感じます。

2023年7月初旬 集中豪雨による増水で、源泉口が水没

上の写真は、2023年7月初旬の集中豪雨の様子です。左手の家屋は源泉口の真上にある「霊泉 したの湯」普段は右手に流れる沢の水面までは3m程はあります。

しかし、この日の豪雨により、浴場から水面まで1mを確実にきる程まで水位が上昇しました。

これまでも、危険と感じる状況まで水位が上昇することはありましたが、近年は「鉄砲水の様に、数十秒で一気に増水する」という傾向が強まっていると感じます。

水位が徐々に増えてくれるならば、危険察知までの時間と余裕がありますが、一気に水位が増えるとなると、危険察知までの時間と対応の時間が極端に短くなり、リスクは増えます。

私たち湯守の仕事として、湯治客皆様に安心して湯治のお時間をお過ごしいただくことは今も昔も変わりません。

自然環境は移り行く、これは自然の掟であり、変わらないということが人間の思い込みに他なりません。常に冷静に、自然を観測し、自然と共生していきたいと思います。

ここからは、湯守の苦労話です。

こういった大水があると、源泉湧き出し口が水没してしまい温泉に泥水、葉っぱなどが大量に混ざってしまいます。また、源泉湧出口からは数週間、源泉と一緒に葉っぱや木くずが湧出してきます。

下の写真は、夜通しお風呂、温泉タンクの清掃をしている際の写真です。掻けども掻けども、湧いてくる泥との戦い。不眠不休で復旧作業を行います。が、流石に朝が迫ってくる頃には、心が折れかかります。泣

大雨直後の温泉の状態、さすがに入浴はできません
貸切風呂に利用している源泉タンクの様子、いくら泥を書き出しても、数日は源泉と共に泥が混ざっています

災害とはいえ、お客様にせっかくのお風呂をご提供できず本当に心苦しい時です。自然のことだと、快くご理解をくださる湯治客の皆様には、感謝の念しかありません。本当に、ありがとうございます。

ある程度濁りがとれても、1週間は、お風呂のお湯が少し濁ります。写真は「霊泉 したの湯」、大浴場の様子。

大雨翌日、清掃後の大浴場「霊泉 したの湯」若干濁っています

こういったことが続くとなると、なるべく自然のまま源泉口を保護しておきたいですが、なにかしらの対策が必要になってくるかもしれません。まだ答えは見出せませんが、日々考え続ける必要があります。と、共に、こういった急な大雨が減ることを願うばかりです。河川だけでなく、土砂災害などのリスクも高まりますので、本当に困ったものです。

宿から500m程の道路では山砂が流れ出てしまい一時通行止め(現在は全て復旧し問題なく安全に通れます)

とにもかくにも、目の前の状況を真摯に受け止め、お客様に安全に、安心して湯治をしていただけるよう努めて参ります。

*現在は、道路も復旧し問題なく安全に通れます。ありがとうございます。

星宗兵
若旦那
400年続く湯治宿(新潟県・栃尾又温泉 自在館)の若旦那、趣味は野球・スキー、ゴリゴリの体育会系、暇があれば山遊び。温泉が湧き続ける限りこの里山を守りたい。
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