国東半島・富貴寺温泉 旅庵 蕗薹
大分県の温泉と文化を楽しむ旅。1泊目は国東半島の旅庵 蕗薹(ふきのとう)、国宝・富貴寺本堂と隣接する敷地に建つ湯宿です。
宿泊する部屋は母屋の奥に点在し、静かに過ごせる落ち着いた雰囲気です。今回は、ゆっくりしたくて、内湯付きの離れスタイルの部屋にしました。家族の家にいるような滞在をテーマにしている宿は、受付したら基本は自由。コーヒーが飲みたければラウンジに来て自分でピックアップすればよいし、布団はどのお部屋でも自分で好きな時に敷く。こういう気楽さもよいものです。
宿泊者専用の男女別の温泉もあります。敷地にある富貴寺温泉の源泉は、マグネシウム・カルシウム・ナトリウム-炭酸水素塩泉、pH6.1中性、成分総計1.870g/kg、炭酸ガスを484mg、メタけい酸213mg含有。泉温32.6度の源泉をそのまま注ぎ、湯船の温度は熱い湯を加えて調整します。最初に肌に感じるのは炭酸っぽい湯の特徴。そのあと、ふんわりとやわらかに肌へなじんでいく感じ。ぬるめの湯で癒されたら、熱い湯をさし湯して温まって上がります。
副住職が打つ絶品そば
食事処にあるガラス張りの場所で毎日そばを打つのは、富貴寺の副住職の河野順祐さん。実はこの宿は、富貴寺のご住職一家がもてなしてくれる宿なのです。河野さんは大学卒業後オーストラリアに留学、帰国後、地元の豊後高田活性化のために、名産の蕎麦を宿で出してはどうかということになり、由布院にある蕎麦の名店へ3年修行に入ったそうです。「なぜ3年も?」とうかがったら「ちょっと勉強しました。というレベルではなく、ちゃんと修行した店でも出せる蕎麦が打てるようにならないと修行の意味がない」と。練る、のばす、粉を打つ、切る、全ての所作が本当に美しい!これは、ますます、夕食が楽しみになってきました。
前菜は、精進風。野菜料理がとても美味しい。豊後高田名産のピーナッツ豆腐がとろとろ。自家製こんにゃくのお刺身、白和え、紅白なますや煮物。実は、これ、みんな地酒にあう~♪
さといも饅頭のあんかけの後、熱々の天ぷらがきました。菊芋や、ほろ苦の蕗の薹、カボチャなど、サクっとあがっています。
精進っぽいコースなのかと思いきや、しっかりと肉料理も登場。霜降り和牛のステーキでがっつり元気をチャージ。
最後に真打ち登場!手打ちそばです。蕎麦の香りが口いっぱいに広がり、上品な出汁つゆも絶品。
部屋の内風呂にも、温泉(源泉)の蛇口があります。出てくるのは約20度ほどの冷たい茶褐色の源泉で、熱い湯をさし湯して調整します。しっかりと温まって、そのままお布団へダイブ。熟睡できました。
「すずらんの有精卵」で、たまごかけごはん。めざしを頭から丸ごとむしゃむしゃ。なんだか、生きる力が強くなってきたように感じられます。そうだった。自分の体は自分で食べたもので作られているのだった。しみじみと美味しく食べることの幸せを感じる朝ごはんです。
副住職にご案内いただき、富貴寺へ。国宝の富貴寺大堂の中で阿弥陀如来様を拝ませていただきました。穏やかなまなざしのご尊顔に心が温かくなります。
十王石仏は豊後高田市指定文化財。死後の世界に行く前に十王様のお裁きを受けなければなりません。向かって右脇にいるのは奪衣婆石仏。三途川で衣をはぎ取り罪の重さを測って大王様にお知らせする方。どうか地獄に落とされずに極楽浄土へ行けますようにとの願いを込めて、温泉旅人道を精進してまいります。