ニセコ黄金温泉、はじめました。 – 温泉会議
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北の湯から南の湯から。日本全国の温泉を繋ぐ「湯戸端会議室」。温泉に浸って地元のレアな話が聞きたくなったら、この場所へお立ち寄りください。

ニセコ黄金温泉、はじめました。

北の湯めぐりすと ・ニセコ観光圏「観光温泉大使」

今年もニセコ黄金温泉(こがねおんせん)の季節がやってきました。黄金温泉は、毎年5月から10月までの期間限定営業。田園地帯にぽつんと佇む、農家さん手作りの小さな秘湯なのです。

5月からとはいえ、今年はGW初日からオープンすると聞いていましたが、オープン前で人がいない時に宣材用の画像を撮らせて頂きたかったので、天気も良かったオープン前日の4月28日に電話したところ、オーナーの林さんから、「ちょうど良かった。お湯も溜まっているし、お湯の温度についてもアドバイスを聞きたいと思っていたのさ。来るときに風呂道具持っておいで!」とのお返事を頂きましたので、首を長くしてオープンをお待ちの皆さんには申し訳ないなと思いつつ、遠慮なくフライングさせて頂くことにしました。ここは、私が顧問を務めるニセコ温泉部が主催する、「ニセコ湯めぐり名人」というスタンプラリーにも加盟して頂いているので、もちろん、スタンプも押してきちゃおうという腹積もり。

この看板が目印

さてさて、この黄金温泉。もともとは林さんのお父さんが始められた温泉施設なんです。林さん一家は米農家なんですが、二十年ほど前、お父さんが息子の賢治さんに農業を託し、ぼちぼち一線を退こうかというタイミングで、温泉でも掘ろうかなと思いたって掘削したところ、幸運にも炭酸ガスを含んだ良質のお湯が湧き出したんだそう。

当初は農業ハウスで利用したり、自分たちで入浴するだけじゃなく近所の人に開放したりしていたそうですが、小屋を作り露天風呂を作りしているうちに、一般の方も受け入れるようになり、年月を経て今の形になっていきました。他にはない手作りの雰囲気と、ぬる目で優しい泡付きの良いお湯。当時はお父さんが打つ美味しい手打ちそばも食べられ、また、お父さんお母さんの人柄にも多くの人が魅了されたことから、全国にファンを持つ温泉となりました。

露天風呂に置かれた釜風呂。ぬる目だが炭酸ガス効果でよくあたたまる(画像はリニューアル前のもの)。

良質のお湯が出たものの、そのまま利用するには温度が低かったため、加温しつつの掛け流しで利用していましたが、十年ほど前に新たに2号井の掘削をしたところ、48.9℃のお湯が出たので、以来、加温なしの純粋な掛け流しで提供できるようになりました。しかも毎日湯抜きしての清掃を欠かさないというんだから素晴らしい!

お湯は底から注がれている。入浴してしばらくすると全身が泡だらけに(画像はリニューアル前のもの)。

そんなお父さんお母さんもやがて高齢となり、行く度に「俺らもトシだし、いつまでできるか分かんねぇわ…」とつぶやいておりました。そしてコロナ禍となって2年目の2021年。毎年営業が始まる5月に入ってもなかなか営業開始の知らせが届きません。一体、黄金温泉はどうなるんだろう? やめちゃうんじゃないよね?と、多くのファンが心配しはじめた5月の下旬。お父さんお母さんの引退が発表されました。「あぁ、黄金温泉もついに終わりの時が来たか…」と思いきや、なんとなんと、息子さん夫婦が温泉を引き継ぐことになったのです。

もともとこの温泉はお父さんが趣味の延長で始められたようなものでしたので、息子の賢治さんは口出しもせず、引き継ぐことも考えていなかったそうですが、年々、清掃時のケガなども心配になってきたので、引退を勧め、閉鎖も考えていたようです。ところが過去の入湯者数などを調べたところ、「半年のシーズンだけでこんなに多くの人がニセコを訪れていたのか…」と驚かれ、これを失くしてしまったら地域のためにならないと、引き継ぐことを決意したとのこと。農作業の傍ら、老朽化した施設の改装をしていたためオープンは8月にずれ込みましたが、オープン後に訪れてみると、洗面台やトイレは新しくなり、給湯器も更新。露天風呂には打たせ湯を新設し、建物や床のペンキは塗り直され、以前の雰囲気を残しつつも、まるで生まれ変わったかのようにキレイになっていました。

以前は壁一面に訪れた人の名刺やメッセージを書いた紙がランダムに貼られていた脱衣室も、洗面台を新調してスッキリと。
露天風呂には打たせ湯が新設。

そして今回、オープンの前日に伺うと、昨年よりさらに更新されていてびっくり。浴室の窓ガラスは全て交換し、出入口のドアはサッシごと交換して、透明感が増しておりました。露天風呂のパラソルも新品に交換し、男女の仕切りはフェイクの葉っぱでバッチリ覆うなど、女性客への配慮も見受けられます。常々「女性客を大事にしないと」と口にしている賢治さん。昨年は8月から3ヶ月間だけの営業でしたが、実際、女性客の割合が増えたんだとか。素晴らしいですね。

(男性露天風呂)浴槽は再塗装し、パラソルは新調。男女の仕切りも自然な感じに。
(男性内湯)内湯も再塗装。シャワーやカランも交換。
(女性露天風呂)男性用とは若干配置が違うが、浴槽の数などは同じ。
(女性内湯)男女間の仕切壁の形は羊蹄山のイメージ。

オープンの準備に慌ただしい中、作業の邪魔にならぬように施設の撮影をさせていただいたあとは、湯加減を確かめるべく入浴させていただくことに。泉質は、ナトリウム―塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩温泉。湯温は内湯が42℃弱で、露天風呂が39℃弱、釜風呂が38℃弱でした。泡付きも以前と変わらずバッチリで、ついつい長湯したくなります。もう最高!

源泉温度が約49℃と高めでありながら遊離二酸化炭素は213.3mg/kg。釜風呂に漬かると1分ほどでこれだけの泡が付くのは、泉源が近いゆえだろう。メタケイ酸も178.8mg/kgと豊富。
男性露天風呂からの全景。天気が良ければ右に羊蹄山。左にニセコアンヌプリが望め、お湯だけでなくこの開放感にも癒やされます。

入浴後は受付棟で休憩しながら少しお話させて頂きました。「トムさんね、ありがたいことに僕らは恵まれてて、周りの人にホントに助けられてるんだわ」と語る賢治さん。いえいえこちらこそ、この温泉を遺してくれたことに感謝しておりますですよ。楽しくてもっとたくさんお話したかったのですが、準備の手を煩わせても申し訳ないので、ほどよいところで切り上げ、今年もこのお湯に浸かれるという喜びを胸に、家路につきました。

そして家に着いてしばらくしてから、ふとあることに気が付きました。

スタンプ、押し忘れちゃいましたがな・・・・・

■ニセコ黄金温泉(こがねおんせん)

北海道磯谷郡蘭越町黄金258−1 TEL:0136-58-2654 ◆営業期間:5月から10月 ◆営業時間:朝9時から夕方7時まで ◆清掃協力金:大人500円 中学生まで300円 未就学100円

おまけ。駐車場の脇には足湯もあります(新設)

さとう 努
北の湯めぐりすと ・ニセコ観光圏「観光温泉大使」
北海道ニセコ町在住。愛称は“トムさん”。持ち前のユニークなキャラを武器に、SNSや道内のテレビ、ラジオ等のメディアを通して北海道の温泉の魅力を伝えている。温泉ソムリエ師範。ニセコ温泉部顧問。FMラジオニセコパーソナリティ。HP:https://tom-z.net
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