滲みてくる海峡の『こくまろ湯』下風呂温泉 – 温泉会議
温泉に浸り、自然に癒され、旅ならではのおいしいものに出会う。温泉旅は美と健康をもたらす幸せの源です。年200日、国内外の温泉を旅して見つけた一湯一会一グルメをつづります。

滲みてくる海峡の『こくまろ湯』下風呂温泉

温泉ビューティ研究家・旅行作家
北の果ての風間浦漁港を見渡す「下風呂温泉」

下北半島をひた走り、海辺の道のカーブを過ぎると下風呂温泉郷の看板が見えてきます。

また、来てしまった。はるばると、本州・北の果ての温泉へ・・・。目の前に広がる風間浦漁港、部屋の窓を開けると潮の香りと波の音。漁船に誘われてカモメや海鳥たちが港へ帰ってきました。

下風呂温泉へと心惹かれるのは、なぜだろう。海峡の港町は、漁火を宿したイカ釣り漁船が行きかい、海の彼方には北海道が望める。曇天の港はとりわけ旅情を誘う。「北の果てまできてしまった」という思いと「海の彼方へ渡ってみたい」という思いが交錯して、なんとも切ない気持ちになります。

ニュー下風呂の部屋
いか墨せんべいとお茶でほっこりと

何度もリピートしてしまう大きな理由は、ここにしかない不思議な魅力を持つ「こくまろな温泉」。

下風呂温泉には3つ系統の異なる源泉があり、宿によって引いている温泉が違うのです。わたしの一番のお気に入りは「浜湯系」で、本日宿泊のホテルニュー下風呂は、この浜湯系源泉です。

魅惑の浜湯系こくまろ温泉

ホテルニュー下風呂の大浴場

青白いにごり湯。湯の中は全く見えない程のにごり湯。大浴場に近づいただけで、ぷーんと硫黄の香り。硫黄泉という気分で入ると、「ん?」と、不思議な気持ち。目を閉じると「塩湯」の感覚が強い気がする。でも、硫黄も濃い。だけど、塩も濃い・・・。そして、こっくりとまろやかな独特の感触。「あぁ~~~。」なんだろう、この気持ち良さ。『こくまろ』の湯の魔力に、たちまち魅了されてしまうのです。

含硫黄-ナトリウムー塩化物泉、pH6.2/中性、成分総4.895g/kg、総硫黄25.4mg、源泉温度55.3度ありながら二酸化炭素ガス390.2mg含有、メタけい酸121.5mg、メタほう酸303.1mg、などなど色々な個性のハーモニーが織りなす濃厚海鮮系ポタージュ温泉。

温泉ビューティ的には、硫黄で血行促進して代謝アップ+塩と炭酸ガスで体の芯まで温められて、バクハツ発汗。いらないものが全身からめらめらと立ち昇っていくような浄化系温泉。お肌がつやピカに輝きます。

海峡の恵みを味わい尽くす

さて。夕食で~す。

目の前の海のごちそうを冷酒で

下風呂温泉の食事は、目の前の海のごちそうが満載。いさぎよく海のものしか出ない!これぞ旅ごはんの真髄です。

海の野菜=海藻から味わいつつ、おいしすぎる魚介のたんぱく質を徹底的にチャージ。筋肉、コラーゲン、元気なハリのある肌と体、将来に続く健康&美肌のための「お魚ビューティ」ディナーです。

風間浦漁港のアワビの陶板蒸し、ぷっくりやわらか。
肉厚すぎて半分にカットしてあるホタテ(笑)、海峡サーモン、旨みたっぷりのヒラメ、ぷりんぷりんのボタンエビ

夜も温泉、朝も温泉で、すっきり。朝食は名物の「いか三昧」です。

風間浦漁港に揚がる「イカ」は夏の下風呂温泉の風物詩。イカ刺し、イカの塩辛、そしてこの地域の名物“イカの貝焼き”。烏賊げそと野菜を甘辛い味噌でからめて焼く、ごはんの供の定番です。

イカの貝焼き

共同湯で異なる源泉を制覇

下風呂温泉のおたのしみは、まだまだあります。

2020年にオープンした共同湯「海峡の湯」

かつての共同湯が統合されたのはちょっと寂しい思いでしたが、新しくなった海峡の湯では、なんと3種類の異なる源泉が別々の湯船にかけ流されていて、入り比べが楽しめます。

内部の詳細はコチラで下風呂温泉「海峡の湯」

下風呂温泉は100m以内に3つの異なる源泉が湧いています。ニュー下風呂で入った『こくまろ』の「浜湯」の他に、白濁の「大湯」(酸性・含硫黄-ナトリウムー塩化物泉)とキリリと透明な「新湯」(含硫黄-ナトリウム-塩化物泉)があります。

海峡の湯では、「大湯」「新湯」2つの湯船が、ヒバ造りの内湯に並んでいて、さらに、露天風呂には海峡の湯が建った場所にかつてあった長谷旅館の源泉を残し「井上靖ゆかりの湯」と命名されて入ることができます。そう、井上靖先生の小説「海峡」で、「ああ、湯が滲みて来る。本州の、北の果ての海っぱたで、雪降り積もる温泉旅館の湯船に沈んで、俺はいま硫黄の匂いを嗅いでいる。」と書かれた『滲みて来る湯』です。

温泉街にカフェがあるのがうれしい

海峡の湯を出たら目の前にある「シモフロカフェ」へ直行。自家焙煎のハンドドリップ珈琲を味わいます。

湯上がりは、自家焙煎のハンドドリップ珈琲で至福のひと時
漁師カードと毎日自家焙煎する珈琲豆が並ぶ
カフェのインテリアは地元畠山商店の木箱(漁業やりんごの木箱)

これを食べないと帰れない

下風呂温泉の仕上げのランチは「あさの食堂」。

大間産本まぐろとウニ丼

悩んだ末に「大間本まぐろとウニ丼」。以前は、海峡マグロ(大間漁港に揚がれば大間産マグロ、近隣漁港なら海峡マグロ)と言っていましたが、今年は「大間産本まぐろ」になってました。店内も改装されてバージョンアップしていましたが、腕を振るうおかあさんやファミリーは全く変わらず。安定の美味しさ。

でも、本当はこれがお目当てでした。

注文してからさばく「活イカのお造り」

7月中旬ごろにイカ漁が始まるのですが、今年は育ちが遅いそうで、この日はイカの水揚げができず残念無念。風間浦漁港には「イカ備蓄センター」があり、豊漁なら水揚げした生きたイカが泳いでいます。あさの食堂で活イカを注文すると、ご主人がバケツを持ってイカ備蓄センターまで走っていき、おかあさんが見事な包丁さばきであっという間にテーブルに運ばれてくるのです。透き通った身のコリコリとした食感と甘みが忘れられません。I’ll be back!

石井宏子
温泉ビューティ研究家・旅行作家
「温泉は地球がくれたビューティーツール」。温泉、自然環境、食事など旅で心も体もキレイになる温泉ビューティ®を研究。温泉と美味しいものを求めて年間200日国内外の温泉を旅する。雑誌や新聞などに旅コラムを書き、テレビ・ラジオにも出演。海外ブランドのマーケティング・広報の経験から温泉地や宿の企画や研修もサポート。日本温泉気候物理医学会会員、日本温泉科学会代議員、温泉入浴指導員、国際中医師、気候療法士。杏林大学 外国語学部 観光交流文化学科 兼任講師(温泉療養学)公式HP: http://www.onsenbeauty.com
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